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朝食を終えると昨夜ヒスイが言っていた通り、天野は畑仕事をする事となった。
屋敷の裏手にある広いスペースには、今の時期に収穫可能な作物が植えられている。
ヒスイに指示された通りに、畝を作り種を撒いていく。
体を動かしている間は余計なことを考えなくて済むせいなのか、気持ちも軽くなったように感じられた。
畑仕事を終えると昼食を取り、今度は掃除や洗濯をしていく。
慣れない家事に悪戦苦闘しつつ、ヒスイに満足してもらえるようにと必死でこなす。
いつまでここで暮らしていくのか分からない以上は、ヒスイとは友好な関係を築いていきたい。それに、恩を仇で返す真似はしたくなかった。
思った以上に時間がかかってしまったが、なんとか作業を終えることが出来た。
春になったとはいっても日はまだ短く、広間に差し込む日差しは弱々しい。天野はクタクタになった体を、畳の上に横たえた。
い草の匂いが鼻に付き、全身から力が抜けていく。
まだ、夕食にまで時間があった。重たくなった瞼を持て余しているうちに、いつの間にか沈み込むように眠りへと落ちていた。
目を覚ますと薄手の毛布がかけられ、外はすっかり暗い。
寝過ごしたのだと気づき慌てて起き上がると、丁度ヒスイが夕食を運んでいるところだった。
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