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気づけばあっという間に季節は移ろい、この場所に来て二回目の梅雨を迎えていた。
中庭に咲いていた桜はとっくに散ってしまい、青々とした葉が雨粒に濡れている。それと入れ替わるように、綺麗な青い紫陽花が咲いていた。
一年も経てばそれなりに家事も早くこなせるようになり、それに伴ってヒスイとの生活にもすっかり馴染んできている。
体のいたる箇所にあった傷や戒めの様な痕もなくなり、自然豊かでのんびりとした生活が性にあっていた。
天野は雨の湿った土の香りを肺に満たしながら、縁側から中庭の景色を眺めていた。
この雨の中では畑仕事も洗濯もする事が出来ず、掃除と食事の支度ぐらいしかやる事がない。
余暇の時間は基本的に、ヒスイは自分の部屋へ引っ込んでしまう。
一人取り残された天野は、こうして外の景色を眺めることが増えていた。それに時々こうしていると、気まぐれにヒスイが隣に来る事があった。
今日は来ないのかなと少し寂しく思っていると、玄関からガラッと開く音が聞こえてくる。
予想外の出来事にビクッと体が跳ね、心臓が暴れ出す。
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