34 / 185

34

 雨が降りしきる中で外に出て、ずぶ濡れになったのが原因だとすぐに察しがつく。  寝ればなんとかなるかもしれないと布団を被り、ガタガタと震えていると部屋の襖が静かに開いた。  熱で潤む視界の中、入り口に目を向けて驚く。  ヒスイが不機嫌そうな表情で、盥《たらい》を持って入ってくるところだった。  天野が慌てて体を起こそうとすると、「馬鹿。起き上がるな」とヒスイに睨まれる。 「……すみません」  謝罪の言葉を口にするのも辛いぐらい、熱が上がっていた。  ヒスイが盥《たらい》を天野の傍らに置くと、「動くなよ」と言い残して部屋を出ていく。  言われなくても、体が動きそうになかった。  呼吸するのも苦しい。浅く早い呼吸を繰り返していると、再び襖が開かれて盆を持ったヒスイが現れる。 「悪かった……」  幻聴なのだろうか……ヒスイが今、謝ったような気がした。 「あいつらをちゃんと止めなかった、俺にも責任がある」  ヒスイは低い声音で言いつつ薬包紙と思わしき包を広げ、粉を湯呑に入れていく。  ヒスイは悪くないと否定しようにも、唇を思ったように動かせない。  眉根を寄せて荒い呼吸を繰り返し、ヒスイをぼんやりとした目で見つめた。  ヒスイは湯呑の中身を箸でかき混ぜると、天野に体を近づける。

ともだちにシェアしよう!