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 ふと、もしこれが生贄とされた人間が残したものだとしたら、何か伝えたいのかもしれない。  そのつもりで筆を取っていたのだとして、読まれないままでは筆者の徒労に終わってしまうだろう。  意を決して天野は、文机の裏側に手を入れて封筒を剥がしていく。  少し厚みのある封筒には乾いた米粒の跡が残っていて、貼る為の道具がなかった事が伺えた。  封筒には封はされておらず、中身は簡単に取り出せるようだ。  中に入っている紙の束には、びっしりと文字が流れるように筆で書かれていた。  丁寧に広げて読み取っていくと、『僕はヒスイに食われたわけじゃあないのです。僕は肺を患い、この世を終いにするのです』という書き出しから始まっていた。   書き出し一文目からヒスイの名前が出ていて、心臓が跳ね上がる。  天野は高鳴る心臓を持て余しつつ、布団に戻るとすぐに隠せるようにと枕の下に封筒を忍ばせ、掛け布団をお腹の辺りにまで引き上げた。掛け布団の下に隠すようにして、続きを読み進めていく。

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