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天野は手紙を読み終えると封筒に戻す。強烈な違和感に心臓が激しく脈打ち、目眩が襲う。原因が何なのか見当が付かない。ふらつく足取りで、壁に掛けられている制服の上着に手紙をしまい込む。
それにしても、思っていた通りヒスイは無罪だった。ヒスイとのやり取りがここには書かれていなかったが、彼がヒスイと信頼関係にあったことは間違いなさそうだ。
そう思い至ると、胸にズキッとした痛みを感じる。
この胸の痛みは、幸朗に対する同情に依るものなのか……それとも……
襖が開き、盆を手にしたヒスイが現れた。
慌てて視線を俯かせ、高鳴る心臓を持て余す。
秘密を隠し見てしまったように思えて、どうにも落ち着かない。
「横になってないじゃん。ちゃんと病人らしくしてろよ」
不服そうな口調のヒスイは、盆を天野の傍らに置いた。幸朗にも同じように、看病していたのだろう。
もしかしたら口移しも、当たり前のようにやっていたのかもしれない。それだったら、躊躇なくあんな事が出来たのも納得がいく。
考えれば考えるほど、何故か心が苦しかった。
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