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 ふらつく足取りで浴衣を羽織ると、屋敷の裏側に回り込む。そこにはミヨとミコが焚き口を覗き込んでいた。 「二人共ありがとうね。でも、もう大丈夫だから。戻ろう」  天野が優しく声をかける。  二人は顔を見合わせて「喜んでもらえたね」「嬉しいね」と言って、スキップしながら天野に近づいた。天野は二人の手を取ると、ゆっくりと歩き出す。  ジメッとした空気が全身を纏って、湯上がりの体には少し暑く感じた。  その分、体温の低い二人の手が体温を奪ってくれるようで気持ちがいい。でも、冬場は寒くなるだろうなと考えて自然と頬が緩んだ。 「お兄ちゃんって」 「幸朗より優しいね」  緩んでいた頬が、瞬時に引きつる。 「その幸朗さんって――」  思わず足を止めると、二人が揃って不思議そうな顔で見上げてきた。  ヒスイが居ない今しか、幸朗との関係について聞けないかもしれない。でも、聞いてしまって良いものだろうか。 「お兄ちゃん?」 「幸朗がどうしたの?」  黙っている天野に、二人して不安げな声で腕を揺らす。

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