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「……幸朗さんって、どんな人なの?」
言ってから心臓が一気に早くなり、手にじっとりと汗をかいてしまう。
思わず周囲を見渡して、ヒスイが聞いているんじゃないかと不安になった。
「お兄ちゃんと同じ歳ぐらいで」
「優しいんだけど、たまに怖い」
二人が細い目をより一段と細めて笑う。
「優しいのに怖いの?」
「うん。怒ると怖いの」
「ヒスイとも、よく喧嘩してた」
妖怪と言い争えるほどに、肝が座っているのは凄い。かく言う天野も、妖怪と一緒に一年も暮らしているが……。
でも、さすがに挑発するような真似はしようと思ったことはなかった。
「けどね、二人は仲良しだったよ」
「だって、幸朗。ヒスイの部屋に入ったもん」
「……部屋に?」
唇が微かに震えてしまう。部屋に入った、それが何を示すのか薄々だが、予想がついた。
「私達は部屋に入れてくれないのに」
「幸朗だけは入れた」
二人は少し不満そうに唇を尖らされている。そんな表情まで同じで、いつもの天野だったら可愛いなと思って自然に笑みが溢れていただろう。
でも今は、そんな余裕がないぐらいに心が底冷えしていた。
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