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「そんな事で顔が赤くなるなんて初心だな」
ヒスイが可笑しそうに頬を緩め、酒を注ぐと再び口をつけていく。
「あいつらが帰ってこないと、酒なんて飲めないから」
言い訳のように言葉を零すヒスイは、いつもより上機嫌なのが見て取れた。
「お酒、強いんですか?」
「さぁーね」
ヒスイは口調も表情も穏やかで、普段の不機嫌な表情が嘘みたいだった。
「前はさ、幸朗とこうして飲んだりした」
切なげな声音で、もう何杯目か分からない酒を注いだお猪口を慈しむように見下ろしていた。
頬がほんのり赤く染まり、気の強そうな目元がとろんとして柔らかく見える。
「……幸朗さんの事、どう思っていたのですか?」
天野はお猪口に入った日本酒を煽り、勢いに任せて問いかける。
「どうって……何?」
ヒスイの力なく眠たげで、どこか艶やかな視線を向けられる。
「好意があったのか……という意味です」
緊張感から自然と、言葉尻が萎んでいってしまう。
少し目を見開いたヒスイは、一旦は何か言おうと口を開いたものの、再び閉ざしてしまった。
居た堪れなくなり、天野も再び徳利から酒を注ぎお猪口に口を付ける。
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