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「僕には記憶がありません。ヒスイさんの役に立てないのが心苦しいのです。そんな僕じゃあ、好いてはくれませんか?」  酔ってるせいなのか、思うままに口から言葉が溢れ出てしまう。  ヒスイに追い出されやしないかと、嫌な考えも頭によぎった。でも、言ってしまった以上はどう足掻いたところで取り返しが付かない。  ヒスイは言葉を発さずに、何か考え込むように俯いていた。  月が雲間に隠れて、周囲が一気に暗くなった。影が落とされたヒスイはまるで、心までもが影に覆われてしまったかのように表情が強張っていた。 「俺は……もう、失うのが怖い」  少し震えるようなヒスイの声に、「どうしてですか?」と問いかける。 「お前たち人間は脆いし、呆気なく消えてしまう。幸朗はまだ若いのに死んだ」  一気に酔いが覚めていき、言葉に詰まってしまう。 「俺は看取ってばかりだ。お前だって、好いてる奴が居なくなるのを見るのは嫌じゃないのか」  翡翠色の瞳が揺れ、苦しげな顔で天野を見つめてくる。

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