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「ヒスイさん……僕は、何も役に立てない事が堪らなく辛いのです」
何の恩も返せない自分自身に嫌気が差し、苦しげにヒスイに告げる。
「そんなの……別に構わないから」
ヒスイの顔から笑みが消え去り、困ったように眉根を寄せていた。
「お願いします。どんな事でもしますから……」
天野はそこまで言って、急激な違和感に苛まれる。
その要因は分からないが、胸がざわざわとして騒ぎ立つ。
「どんな事でもって……お前に記憶がない以上はーー」
ヒスイはふと、言葉を切ってから忙しなく視線を泳がせた。
「何か思いついたんですか?」
ヒスイの動揺にも似た様子に、すかさず天野は詰め寄る。ひとまず、さっきの違和感は気の所為だと誤魔化した。
「……いや、なんでもない」
ヒスイが苦い表情を浮かべ目を逸らすと、立ち上がろうとして腰を上げる。
「ちょ、ちょっと待ってください!逃げるなんて酷いです。薄情です」
慌ててヒスイの腕を掴む。ヒスイはこちらを見ようともせず、眉根を寄せたままだった。
さっきまでの様子とは全く違ったヒスイの雰囲気に、違和感が否めない。
「ヒスイさん……お願いです。何か思い当たるのでしたら、ちゃんと教えてください」
静かにヒスイの腕を離すと、ヒスイが諦めたような溜息を吐き出した。
「そこまで言うなら……腹をくくれよ」
ヒスイが冷たく言い放つと、今度はヒスイが天野の腕を強く引いた。
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