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自分の惨めさに、自然と涙が溢れ出す。
――無駄な涙を流すなよ。勿体無い。
こんな時に限って、ヒスイの無愛想な物言いを思い出す。決して優しい言葉ではなくとも、あれはヒスイなりの励ましの言葉だと分かっていた。
全てを変えてしまった、あの日の夜――
自分がヒスイに縋りさえしなければ、こんな事にはならなかったのかもしれない。
無理に聞き出しなんかしなければ、ずっと傍にいられたのかもしれない。
歩みを止めれば、今度は嗚咽が溢れ出した。
――日本男児がそんなに女々しくていいのか?
ヒスイの言葉が次から次へと思い出されてしまう。過去の記憶が無い分、ヒスイとの出来事ばかりが蘇る。
今すぐにでも会いたい。本当は離れたくなんかない。でもあの場所に居続けるのは、胸を抉られる心持ちにさせられてしまう。自分はどうするのが、正解だったのだろう。
考えても一向に答えが出ず、憂鬱な気持ちを抱えたまま、とにかく少しでも進もうと足を動かしていく。
鳥の囀りと、木々が風に揺れ葉を擦り合わせる音以外は静かだった。
何処かで少し休もうかと、周囲に視線を彷徨わせる。ふと、右手に少し開けた場所が目に留まった。変わらぬ景色を見続けてきた天野にとっては、一種の期待を抱いてしまう。
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