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 恭治の家族が暮らす日本家屋は、島でも広い敷地を有している。天野の目の前には、かつて恭治に連れられて訪れたこの日本家屋が、堂々たる出で立ちで昔と何ら変わらず構えられていた。  この家には恭治の他に祖父母と両親、弟と妹の七人で暮らしている。家族の誰しもが仲がよく、天野は密かに憧れを抱いていた。  ただ向こうからしてみれば、資産を有り余るほど持ち合わせ、良い大学に通っている天野のほうが羨ましく感じているかもしれない。だからこそ余計なことは言わず、心の奥底で羨望の眼差しを向けていた。  恭治が玄関を開けると早々に、恭治の母親である多恵に笑顔で出迎えられる。相変わらずふっくらした体格と優しげな目元に、懐かしさと複雑な感情が押し寄せた。 「あらあら。蓮介くんじゃない。元気だった?」 「はい……ご無沙汰しております。その節はお世話になりました」 「いやーねぇー。そんな他人行儀じゃあ、おばさん困るわ」  朗らかに笑う多恵に、天野は少しだけ心持ちが軽くなる。 「立派な学生さんにまでなって、ご両親も安心なさっていることね」 「母さん。俺とこいつは大事な話があるから、部屋には来ないでもらえるか?」  多恵の長話を懸念してか、恭治が間に入った。

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