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恭治に引きづられるように連れて行かれたのは、漁師たちが休憩している小さな小屋だった。
卓袱台と座布団に、畳まれている布団が置かれているだけだ。窓から差し込むかすかな光だけが、部屋の中を照らし出していた。
天野を先に入れると、恭治が後ろ手に扉を閉める。余計に部屋が暗くなり、電気を付けようにも恭治に背後から抱きすくめられ、身動きが取れなくなってしまう。
「……恭治? どうしたんだ? 君らしくない」
緊張で心臓の鼓動が激しく打つ。さっきの言動といい、恭治が別人にでもなってしまったのではと思えてならない。
「俺は……お前を好いている」
恭治が天野の耳元で囁くように告げた。その告白に一気に熱に浮かされたように、全身が熱くなる。
「好いてるって……君は何を言って――」
言ってる間に天野の体が反転し、恭治と向い合せになった。
恭治に真剣な眼差しを向けられ、思わず言葉を失う。出会った頃からやたらと世話を焼いてくれていたが、まさか自分に好意があったとは思ってもみなかった。
「お前は俺が嫌いか?」
恭治の見たことのない憂いに満ちた表情に、天野は静かに首を横に振る。
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