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「ありがとう。恭治。恩に着る」  天野のは泣き出したい気持ちを無理やり抑え込み、頬を緩める。  一瞬傷ついた顔をした恭治も、覚悟を決めたのか「親にどう話すかな」と小さく零す。 「理由は僕から話す。きっとご両親にも、気苦労をかけてしまう事になるだろうから……」 「……分かった。でも俺も立ち会うからな」 「すまない。とんだ事に巻き込んでしまって」  困ったように笑う恭治に、天野は謝罪を述べる。 「お前は何でもかんでも詫びを入れてくる。そんなんじゃあ、見くびられるぞ」  恭治が冗談めかしに言うと、天野の頭を強く撫でてきた。強張っていた天野の頬が、自然と緩んでいく。恭治がいつもの快活な雰囲気に戻っていることに、天野はホッと胸を撫で下ろす。 「話を付けるなら早いほうが良いだろう。広間に両親を呼んでくるから、先に行っててくれ」  そう言って恭治は立ち上がった。つられるように天野も腰を上げて立ち上がる。  不意に恭治に抱きしめられ、天野は息を詰める。 「すまない」  恭治がぽつりと零し、天野から離れると背を向けて部屋を出て行ってしまう。  天野は一人取り残され、恭治の期待に応えることが出来ない自分を酷く悔やんだ。

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