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台風も去った明け方近くに、本州へと納品に行く漁船に同乗させてもらうと天野は島を後にした。
船上から見える地平線に浮かぶ朱色の太陽が、半分ほど顔を出していて壮観だった。まるで水面に道を作るように、朱色の光が海に描かれている。
恭治とその眺めを堪能しつつ、天野は屋敷に戻ってからの計画を頭の中で反芻していく。
上手くいく保証は何処にも無く、不安も無かったわけじゃない。泰子が今どんな様子なのかと、落ち着かない心持ちでもあった。
ここまで来たからにはやるしかないのだと、自分を鼓舞するように拳を固く握れば、恭治が「大丈夫だ」と肩を叩いてきた。
困ったように頬を緩めている恭治に「ありがとう」と天野が口角を上げた時、船が本州に着いてしまった。
「本当にありがとうございます」
天野は市場に向かおうとする勇夫に、頭を下げて礼を述べた。
「気にするな。泰子ちゃんが来れば、あの家もまた賑やかになるだろうしな。君のお父さんには世話になったが、泰子ちゃんの未来に陰を落とすようなことはあっちゃならない。同じ親として、俺はそう思う。まぁー今の時代、あんまし大きい声では言えんがな」
君も頑張れよと言って恭治と同じように困ったような笑みを浮かべると、他の漁業仲間を追うように市場へと向かって行った。
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