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「父を……裏切ることにもなる……泰子。お前はどうなんだい?」
突如として襲い来る罪悪感から、自信を失ってしまう。本当にこんな事をしてしまって良かったのだろうか。怒りに任せて、島まで行って頭まで下げた。全て泰子の為だと、まるで言い訳のように行動にしてしまった。でもこれは本当に、正しいことだったのだろうか。
「わたくしは……お兄様がそこまでしてくださったことに、まずは驚いてますの。でも……もう……」
泰子がそこまで言うと、唇を噛みしめる。
「もう何だい? もしかして、話を勝手に進めてしまった事を怒っているのかい?」
「違うわ。そうじゃないの……逃げる時間がもう残っていないの。来月には学校を辞めて、婚姻することが決まってしまったわ。お父様に必死で卒業まで待って欲しいとお願いしたの。でも駄目だったわ」
膝の上に乗せていた拳を震わせ、泰子が悔しげに唇を噛みしめる。
女中が言っていた通りで、もう一刻の猶予も残されていないのだと分かった。
「僕が説得するから安心したまえ。それより此処に残るのであれば、いずれは高松家と婚姻することになる。父とは縁を切って恭治の家に嫁に行くか、此処に残って高松家に嫁ぐか……お前はどっちらを望むんだい?」
「わたくしは……」
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