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 理由に結びつく手がかりはないかと、天野は周囲をゆっくりと見渡していく。さっき入った時と変わらず、見慣れない草花や中身の分からない瓶に入った液体ばかりだ。  恐る恐る机の上に近づき、書物に視線を落とす。日に焼け茶色く変色している紙面には、薬草の絵とその植物の効能や特性が書かれている。「咳止メニ効能アリ」と書かれた箇所を見つけ、幸朗の為に薬を調合していたのではないかと疑問が湧き上がった。 「分かりもしないくせに、見たってしょうがないだろ」  いつの間にかヒスイが戻ってきて、天野の姿を見るなり眉を顰めた。 「咳止めの薬を作ろうとしていたのですか?」 「どうしてその(ぺーじ)を開いていたのかなんて覚えてない。たまたまじゃないのか」  ヒスイにそう言われてしまえばそれ以上の事は天野に知るすべがなく、どちらにしてももう遅い事のように思われた。 「そんなことより、ミヨとミコが腹が減ったってさ。呑気なもんだよこんな時に……お前も朝から何も食ってないんだろ。どうせ直ぐに出ていきそうもないし、この話はまた明日にするから」  ヒスイの言葉に思い出したかのように急激な空腹が襲いかかり、天野は素直に頷いた。

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