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少し遅い夕餉 を終えると、天野は湯を沸かすために家の裏側へと向かう。周囲に街灯は無く、暗闇の中を手元にある小さな蝋燭の火を頼りに進んでいく。月も星も厚い雲に覆われているせいで、今日はその姿を隠してしまっていた。
そんな寂しげな闇夜に加え、広間に居たときにも聞こえてきた不気味な鳴き声がとても近くに感じられてしまう。動物や虫の鳴き声だと分かっていても、恐怖が消えるわけもなく天野の足取りも自然と重たいものへと変えていく。
「俺が見つけなかったらこんな真っ暗の中で、お前は今頃どうするつもりだったんだ?」
背後からいきなり声を掛けられ、天野は驚いて足をつまずかせた。蝋燭の火が大きく揺れ、危うく消えてしまうところだった。
腕を引かれて天野は体制を立て直すと、ヒスイの険しい表情が微かな明かりに照らし出された。
「すみません……でも、どうしてあの場所だって分かったのですか?」
「それはお前を最初に助けたのが、あの場所だったからってだけ」
憮然とした様子でヒスイが先立って歩きだす。その後ろを天野は少し足早についていく。
「最初の時……僕はあの場所で気を失っていたのですか?」
記憶を取り戻した時、何らかの理由で入水した事は覚えている。そこから目覚めるまでの間に何があったのか、ヒスイからは聞かされていない。
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