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「お兄ちゃんのお願いなら」
「何もくれなくたって、叶えてあげるよ」
二人は顔を見合わせて笑い合う。屈託のない二人の笑顔に、急激な罪悪感が胸に押し寄せ天野は口を閉ざす。
自分は今、この二人にこの森からこっそり出て折り合いが付くまで帰ってこないように言うつもりだった。孤独が怖い。それだけの理由で、二人を利用する気でいた。
なんという人畜生《にんちくしょう》だ。母の付けた名を反するように、私欲に目が眩んでしまっていた。まるで父と同じだ。金で人を動かし、動かされようとしていた。
「お兄ちゃん」
「どうしたの?」
天野は二人に体を揺さぶられ、涙が弾けたように畳に落とされていく。
「泣かないで!」
「お兄ちゃん!」
「ごめんね、ごめんね。僕は……最低な人間だ」
震える声音で天野は何度も口に出す。嗚咽が溢れ、狂ったように涙を流していく。
「おい。今度はなんだ」
襖が開く音と、甘い香りにヒスイが来たのだと分かった。それでも天野は俯いたまま涙を流す。
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