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いつもとは違う感覚に、天野はゆっくり瞼を開けていく。
「えっ……」
すぐ近くにヒスイの無防備な顔があり、天野は金縛りに合ったかのように一瞬体を強張らせる。
長い睫毛を伏せて静かに寝息を立てているヒスイの姿に、起こさないようにと天野は慎重に息を吐き出していく。いなくなっていたり、ヒスイとの記憶を奪われている可能性がなかったわけじゃない。いらぬ不安だったようで、こうしてヒスイと事も覚えているし、朝まで傍に居てくれていた。天野は体を弛緩させ、胸を撫で下ろす。
もう自分が悩む要因は消えたのだと分かり、心の枷が外れたかのように軽くなった。変わるように、今度は喜びが胸を占めていく。
白く柔らかい朝の日差しがヒスイの顔を照らし、幻想的なベールが包み込んでいる。天野は切なくも愛おしい心持ちで、その様子を見つめた。
微かに身動ぎしたヒスイが、ゆっくりと瞼が持ち上げると天野と視線が交わった。
「何?」
不機嫌さを滲ませている声に、いつものヒスイだと天野は頬を緩める。
「傍に居てくれて安心しました」
途端にヒスイが顔を顰め、視線を逸らす。
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