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「そういえば、もうすぐお盆ですね」
「お盆?」
妖怪の世界では知られていないのか、ヒスイが手を止めて首を傾げる。
「亡くなっているご先祖様の供養するための行事です。僕も以前、この時期になると妹の泰子と一緒に盆提灯を片手にお墓参りに行っていました」
母が亡くなってからは、母の分まで天野と泰子二人が先祖代々の墓に足を向けていた。加えて、家の前でオガラを炊いたり、精霊馬を飾ったりと本格的なものだった。
「知ってる! きゅうりの馬!」
「ナスの牛!」
懐かしいねと二人は顔を見合わせる。
「あと、河に流したの」
「四角い紙の中に、蝋燭立てて」
ミヨとミコの言っているのが灯籠流しの事だと分かり、そこで天野は思い至る。
「あの池で灯籠流しするのはどうでしょうか? 一般的には河ですが、あの池は結構広いですし……」
幸朗の追悼にもなるのでは、と天野は考える。ヒスイが覚えていない今、悼むことが出来るのは自分とミヨとミコだけだった。たとえ実際には会ったことのない相手でも、手紙を見て周りから話を聞いた以上は知らない人ではない。
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