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 天野はヒスイの表情を探るように視線を向ける。 「お前がやりたいならそうすればいい」  ヒスイは興味なさげに食器を抱えると、炊事場へと行ってしまう。悼む相手がいることを忘れてしまっている以上は、その素っ気ない態度は致し方ない。分かっていてもどうすることも出来ないもどかしさは、簡単には拭い去ることが出来なかった。 「今日やろうよ!」 「そうしよう!」  浮かない心持ちの天野に対し、ミヨとミコはヒスイの事など気にも留めずに随分とやる気満々のようだ。天野の周りを飛び跳ねて「和紙はどこ?」「竹を切らなきゃ」と口々に道具を上げていく。 「まだお盆じゃないから駄目だよ」  はしゃぐ二人を宥めるように、天野は悄然とする心持ちを押し隠し表情を和らげる。 「でも……もうすぐ行かなきゃいけないから」 「お盆まではいれないから」  はしゃぐ二人が途端にぺたりとしゃがみ込む。寂しげに表情を曇らせ、天野を上目遣いで見上げる。 「いられないって……どうして?」  二人の言葉に息が詰まる思いで、天野は問いかける。 「そろそろ」 「先に進まなきゃ」  二人がふわりと微笑んだ。天野は口を噤む。そうだった、二人は旅して回っているのだ。それを止める権利など誰にもない。時が来たから此処を離れる、ただそれだけのことなのだ。 「そっか。それなら今夜にでもやろう」  天野の言葉に二人は揃って頷いた。

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