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 灯籠流しをするために、天野は早速準備に取り掛かろうとして自分の不器用さを痛感した。材料となる木の板が此処にはなく、切るにしてもノコギリぐらいの道具しかない。それに支柱にする為に、竹を細く切る必要がある。まともに包丁も握れない成金の息子には、そんな大それた事は出来なかった。  それでもミヨとミコを失望させるのは忍びなく、悩みに悩んだ末、池の近くに竹灯籠を並べるという事で収まった。  早速竹を取りに行こうと、炊事場で夕飯の下準備をしていたヒスイに天野は声を掛ける。 「ヒスイさん。竹を取りに行きたいのですが、この辺に生えていますか?」 「何に使う気?」 「灯籠を作ろうと思っているのですが、竹が必要でして」  天野はヒスイの隣に並ぶと、ヒスイの手元を覗き込む。器用に魚を開いている流暢な動きに、天野は羨望の眼差しを向ける。 「流石ですね。僕と違って器用です」 「お前が不器用なだけだろ。お前一人じゃ、何時間かかっても竹が切れないだろうし――」  捌いた魚を器に入った液体に付け、ヒスイが溜息を吐きつつ水道で手を洗う。 「俺も行くから、蔵からのこぎり持ってきて」 「ありがとうございます。助かります」  ヒスイの言う通りで、自分では竹を切るのにかなりの時間がかかってしまうだろう。  天野はヒスイの指示通りに、屋敷の裏手にある蔵からのこぎりを持ち出すと玄関の前でヒスイが来るのを待った。

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