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 ヒスイと共に屋敷を戻る頃には、日がだいぶん傾き始めていた。木々に差し込んでいる光が霞がかり、屋敷を出たときよりも弱々しい。  短く切った竹筒を胸に抱え急ぎ足で屋敷に戻ると、天野は疲れ切って玄関の上がり框に崩れ落ちるように座り込んだ。 「大丈夫なの? 夜にはまた長い距離を歩くのに」  荒い呼吸を繰り返す天野とは対象的に、ヒスイの表情は涼しげだ。へばっている天野の横を、ため息を吐きつつ通り過ぎていく。  天野は額から流れ落ちる汗を袖で拭う。自分の体力の無さに辟易しつつ、震える足を何とか立たせる。竹筒を胸に抱えて大広間へと向かうと、ミヨとミコが手遊びをしてじゃれ合っていた。 「ほら、取ってきたから。筆で絵を描くといいよ」  天野は縁側に竹筒を並べていくと、「やったー」「ありがとう」と歓喜の声を上げ、ミヨとミコが近づく。 「二人の言ってた灯籠を用意できなかったから。ごめんね。これで我慢して」 「竹を使ったのも知ってる」 「見たことある」  目を輝かせて竹筒を手に持つ二人に、微笑ましい心持ちが湧き上がる。 「ヒスイさんが切ってくれたんだよ。後でお礼言わないとね」  天野はそう言い残すと、炊事場へと足を向ける。背後でキャッキャとはしゃぐ二人に寂しい気持ちが込み上げ、天野は密かに目頭を熱くした。

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