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 最後にヒスイが線香を供えると、目を閉じて手を合わせる。その姿を天野は複雑な心持ちで見守った。  幸朗との記憶を失ったヒスイは、一体何を語りかけたのだろうか。感情の読み取れないヒスイの横顔に、天野はもどかしさと切なさがこみ上げてしまう。  目を開いたヒスイは視線に気づいたのか、天野に視線を向ける。 「見過ぎなんだけど」  ヒスイが眉間に皺を寄せ、気まずそうに視線を逸らす。気づかれていたのかと、天野は居たたまれなくなった。なんと声をかければいいのかも分からず、天野は気まずい気持ちを押し隠して竹筒を池の近くに並べていく。 「この中に蝋燭を立てていきます。ヒスイさんは火を灯してください」  天野はミヨとミコに蝋燭を、ヒスイに火が点いている蝋燭を手渡す。 「こうでいいの?」 「倒れないかな?」  天野はミヨとミコの手助けに回り、蝋燭を固定していく。作業が終わる頃には辺り一面が、暗闇に呑み込まれていた。  ポツポツと並べられた竹灯篭の淡い光が幻想的な情景を生み出し、月明かりと星の光がそれを補うように周囲を照らしている。  全くの闇じゃないことに、天野は安堵の溜息を漏らす。 「綺麗だね」 「そうだね」  ミヨとミコは魅入られるようにして、その光景を見続けている。

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