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池には鏡写しになっているような丸い月が浮かび、眠っている睡蓮がそれを囲むように浮いていた。
ふと目を凝らすと、一つだけ白い睡蓮の花が開いているのを見つける。もしかすると、寝ぼけて月明かりを陽の光と間違えたのかもしれない。
天野は可笑しくなって、頬が自然と緩んでしまう。少し離れた場所にいたヒスイに近づくと、耳打ちするように「一個だけ間抜けな花を見つけました」と伝える。
「お前みたいだ」
天野がその睡蓮を指差すと、ヒスイがそちらに視線を向けて笑った。
「僕は間抜けじゃあないですから」
天野は心外だとばかり眉根を寄せ、池の近くでしゃがみ込むミヨとミコの後ろ姿を見つめた。
自分が生きている間に、彼女たちは戻ってきてくれるのだろうか。聞きたくもあったが、聞いてはいけないような気もした。
「寂しくなりますね」
代わりの言葉をヒスイに投げかける。たったの二ヶ月ほどの間だったが、天野にとっては夢のような期間だった。一緒に食事をし、遊びに付き合う。楽しいだけでなく、天野が家を飛び出したことで可哀想な想いもさせてしまったが……前の家では得られなかった幸福な時間を、天野は此処で得ることが出来た。二人には感謝してもし尽くせない。
感慨深い気持ちで二人の背を見つめていると、ふわっと目の前を発光体が過っていく。天野は驚いて「あっ!」と声を上げる。
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