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ミエルンデス9話

「いただきますー!」 手を合わせてそう言った後にうどんを食べる。 ………う、うまい! やっぱ、うまい! くうう、モチモチな麺最高!出汁も美味しいしさ。何杯でも食べれるよ。 あまりの美味しさにガツガツ食べてるけど、何か………忘れてないか俺? 「先生、美味しい?」 徳川の声でハッと気付く。 あ………さっき、こいつにいかされたんだ俺。 先生なのに……生徒といかがわしい行為をしてしまった。不可抗力と誰か言ってくれたら嬉しいけども。 「先生、うどん好きなんだね。しかも、食べ方エロいし」 ぐはっ! 徳川の言葉にうどんを詰まらせそうになる俺! ちょい、咳き込む。 「先生、水」 徳川が水が入ったグラスを直にくれて、難を逃れた。 「先生って本当、可愛い」 俺をみてニコッと笑う徳川。 くそ!可愛いとか可愛いとか、嬉しくないし!それに、俺は学校に戻らなければ! うどん食べてからだけど。 「徳川、俺に可愛いとか言うな!」 「なんで?可愛いのに?」 「可愛く無いし!大人に可愛いとか言うな!」 「だって、可愛かったよ………さっきの先生は……俺にいかされてたでしょ?」 ニコッと笑いながら何て事言うんだあ!!! もう、俺はコイツと一緒に居てはいけない! 「帰る!」 俺は立ち上がる。 うどんもったいないけどさ、これ以上はここにいちゃダメだ。 徳川とこれ以上…………立ち上がったのに目の前が真っ暗になった。 ◆◆◆◆◆ 「先生、先生ってば!」 身体を揺さぶられている感覚。 先生って誰か呼んでる? 「ん……」 薄目を開けて確認。 で、……………俺を見下ろす徳川。 えっ?徳川? 「先生、起きて、電話」 電話?えっ?徳川が何で俺を見下ろしてるんだ? 沢山の疑問は着信音で消された。 あ、うん、電話……。 徳川が俺の携帯を目の前に差し出してきたので、とりあえず電話に出た。 「林田さん?良かった!繋がった!いま、どこですか?」 俺がモシモシを言う前に勢い良く相手が話してきた。 声でアパートの大家さんだとはわかる。 でも、何で電話?俺は家賃は払ったよな? 「友人宅に」 質問に答えると、 「友人宅ですか!じゃあ、今夜もそちらに泊めて貰えますかね?」 「はい?」 意味が分からない返答に俺はきょとん。 「実はアパートが火事で……」 「はいいい?!」 大家さんの言葉に俺は変な声で返事してしまった。 ◆◆◆◆◆ 「林田さん!」 俺を見つけて手を上げる大家さん。 大家さんは結構、年配な男性で優しい人だ。 火事の話を聞いて俺はアパートに戻ってきたのだ。 「後ろの子が友達?」 俺の後ろを見る大家さん。 「こんばんは」 ペコリと頭を下げる徳川。 ……徳川。 そう、徳川と一緒に来ていた。まあ、勝手に着いてきたんだけどね。 「火事はね、林田さんの隣からの出火なんだよ」 「えっ?うそ、だって隣は誰も住んでないでしょ?」 驚く俺。 俺の部屋の隣は先月、引っ越して行ったのだ。だから、火が出るのはおかしい。 「警察がね、もしかしたらホームレスとかが入り込んでたりしたのかもって言ってるんだよ。まあ、不審火の疑いあるんだ。で、林田さんからも話を聞きたいと警察が」 大家さんの話に頷くけど、 「あの、俺の部屋も焼けたんですか?」 そっちが心配。 「いや、壁を焼いただけなんだけどさ、穴あいちゃって……部屋の中は水浸しだよ」 ああ、やっぱり! 無事なわけがないよね。 だって、大家さんが友人宅に泊まれるか聞いたんだもん。 住めないよね。 ◆◆◆◆◆◆ 「あーあ、」 警察の事情聴取も終わり、遠巻きに部屋を見た。 黒く焦げたベランダの隣、俺の部屋………ベランダもびしょ濡れ。 消防の人がまだ危ないからって部屋に行けない。大丈夫そうな荷物欲しいのに。 「先生、帰ろう。荷物は明日取りにこようよ。今夜は警察の人が見ててくれるから火事場泥棒にはあわないよ」 徳川が俺の肩を叩く。 「徳川……」 振り返り徳川をみるとニコッと笑ってくれた。 その笑顔にホッとした。 なんか、徳川がいてくれて良かったとかちょっと思った。 「行こう」 徳川が俺の手を引っ張る。 ぎゅっと掴まれた手をじっと見る俺だけど、なんか………いまは嫌じゃない。むしろ、安心してしまう。 手を繋いだまま歩いてしまったよ。 ◆◆◆◆◆ 「先生、無事で良かったね。あのまま帰ってたら危なかった」 部屋に着くと徳川にそう言われた。 あ、確かにそうだ。 俺は帰ろうと立ちあがったはずなのに、 「センセ、貧血起こしてラッキー」 ニコッと笑う徳川。 えっ?また、貧血? そうだ、目の前が真っ暗になったんだ。 「うどん食って倒れたんだ俺……」 「うん、急に倒れたから慌てて抱きとめた」 うっ………また、俺は迷惑かけて! 「ごめん」 生徒に世話かけるなんてさ。 「いいよ、先生の寝顔可愛かったし」 ぐはっ!コイツはまた! 「だから、可愛いとか言うなって!」 「可愛いって、ほら、写メ」 徳川はスマホをいじりながら写メを俺につき出す。 そこには俺の寝姿が。 ぎゃー!うそー! 「ば、ばか!そんなの撮るな!消すんだ、今すぐに!」 抹消しなければ! こっ恥ずかしいじゃないか! 「だーめ!」 徳川はイタズラっこみたいな笑み。 こんにゃろ!奪ってやる! スマホを奪おうと徳川に勢い良く飛びつき、押し倒す。 そして、スマホを…………スマホを奪おう前に我に返ってしまった俺。 我に返らなきゃ良かった! だって、徳川を押し倒してる。 なに?この構図。 「先生…………大胆、続きしたいの?」 俺の下で余裕な笑みを浮かべる徳川。 「ば、ちがう!」 離れようとしたのに徳川の両腕が俺の身体を捕まえて抱きしめてきた。 徳川の胸のうえに乗る形になる。 やばい、離れなきゃ…… 「先生、抱き心地いいね、すごく、いい匂いもするし」 徳川の腕は俺を離してくれない。 つーか、頭を撫でてきたし、 徳川の大きな手が頭を何度も撫でてくる。

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