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ミエルンデス11話
もう1回聞き直していいかな?
「は?何て言った?」
「だから、琳みたいな霊感体質は俺しか守れないって」
…………俺って頭が悪いのか耳が悪いのかどっちかだ。
霊感体質って徳川言ったような気がする。
「ごめん、俺……色々あってパニクってるんだと思うがけど、霊感体質とか言った?」
「言ったよ?琳って自覚なしの霊感体質だもんね」
えーーーと、
俺は徳川のギャグに乗りツッコミすればいいのかな?
なんでやねん!って………
「俺が琳を1人にしたくなかった理由ってさ……アレ」
徳川は指をどこかに指す。
どこ?
指先を辿るとクローゼットがあって、少し隙間が開いてて、
開いてて…………あれ?なんか動いた?
隙間にチラリチラリと黒い物が移動しているみたいに見えて目を擦ってみる。
「やっと見えた?厄介者に目をつけられたね琳」
「はあ?」
何を言ってんだ?
「黒いの見えているんでしょ?アレって死神だよ」
「はあああ?」
思わずデカイ声が出て、自分で口を押えた。
壁薄かったら申し訳ない!
「ホントは先生も電車の事故で死ぬはずだったんだ。でも、先生は電車に乗らなかった。だから、死神が悔しくて付きまとっている」
徳川の説明は中2病っぽくて、どうも………でも、徳川は噓をつく子ではない。
真面目な子。
俺にセクハラしたけども!
「ご、ごめん徳川………先生はさ、えっと、徳川の悩みとかあったら相談のるよ?だから、そんな空想じみた事」
と言い掛けて言葉が出なくなった。
クローゼットがさっきより開いてる!
しかも、俺の目の前でゆっくりと開いてて………黒い何かを感じた。
「先生、動かないでね。大丈夫、俺達がいるから先生は死なない」
徳川は俺をぎゅっと抱きしめた。
背中がゾクゾクしてきた。
快楽からくるゾクゾクではなく、寒気からくるゾクゾクだ。
空気がキィーンと音を立てたような気がした。
少しづつ開いていくクローゼット。
それだけでもアンビリーバボーなのに、その中から黒い何かが噴き出してきた。
「うわっ」
思わず声が出た。
キーンと耳鳴りがして頭が痛くなる。
「琳、大丈夫だ」
徳川が俺を強く抱きしめてきて、思わず彼の胸に顔を埋めてしまった。
べ、別に怖いわけじゃないからな!!
なんて自分に言い聞かせる。
背中が相変わらずゾクゾク寒くて、そのゾクゾクが頭へと移り、毛穴からゾクゾクが抜けていく感じがする。
全身で寒けを感じるのは初めての体験だった。
キーンとする耳鳴りが大きくなってきて、耳を塞ぎたくなる。
「大丈夫だよ、琳直ぐに居なくなるから」
徳川の声が耳元で聴こえた瞬間にグルルルっと犬が唸る声がした。
えっ?犬?
徳川って犬飼ってたっけ?
顔を上げて徳川を見ると、彼は何かをジッと見つめている。
何を見てる?
あの黒いモノ?
俺も恐る恐る徳川が見ている方を見た。
黒いモノが人の形をしている。
嘘!ヤバイじゃん!
徳川は死神って言ってた。まさか本当に?
本当に俺を狙ってんの?
そう考えたら学校で起こった不可思議現象の謎が解けたような気がした。
そうだ、いつも俺の側で起きていた。
火事も………きっと。
じゃあ、俺死んじゃうの?
凄く凄く怖いんだけど?
思わず徳川のシャツを力強く握った。
「琳、大丈夫だよ」
徳川に俺の恐怖が伝わったのか耳元で囁かれた。そして、ぎゅっと抱きしめられた。
何か安心してしまって、つい、
「うん」
と徳川にしがみついた。
「もう、終わるよ」
そう徳川が言った瞬間だった、
ワンっ!!
犬が大きく鳴いた。
その声と一緒にキーンとした耳鳴りが大きくなり、直ぐにパーンと何かが割れたような音がした。
「な、なに?」
徳川の胸に顔を埋めていたせいで何が起ったか分からなかった。
「終わったみたいだよ、琳」
徳川に言われ、俺は部屋を見る。
部屋は何も変わらずで、そしてクローゼットも閉まっていた。
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