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レイカンタイシツナンデス
「まだ居る?」
俺はまた影虎を感じたくて徳川に聞く。
「もちろん。今は琳の右側におすわりして、尻尾パタパタしてる」
ベッドの端に座る俺の足元を指さされた。
右側……ああっ、いつも影虎が居る位置だ。
何故か右側が好きらしくて、いつもピタリと右側を定位置にしてたな。
こんな事、俺しか知らないし、影虎の話なんて学校で誰にも話した事ない。
影虎の話は思いだすだけで泣いてしまうから、話題にすら出したくなかったもん。
でも、だからって忘れてたわけじゃない。
いつも、心のどこかに思い出と一緒に影虎が心の隅っこにいた。
徳川には影虎がずっと見えてたんだ。
今も………
なんか、すげえうらやましい。
「琳は泣き虫だな」
徳川のあのボイスが直ぐ横で聞こえて、温かい掌が俺の顔に触れた。
涙を拭うみたいに指先が動いている。
「う、うるさい!泣いてない!」
鼻声で、ぐすぐすいってるのに泣いてない!なんて、俺もばか。
「泣けばいいのに。我慢しなくていいよ?だって、怖かったでしょ?」
徳川の言葉に思わず泣きそうになるけど、泣かないよー!俺は大人で先生だぞ!
「へ、平気だし」
俺は顔をそむけた。
「強がりな琳も可愛くていいけどね」
徳川の手が今度は頭にボフンと乗せられ、グリグリと撫でられた。
こ、子供扱いかよ!
むっ、とくるけど……ううっ、何でかな?嫌じゃない自分がいる。
「強がってないし………徳川って、見える人なんだ?」
でも、テンパっているようで、今更な事を口にしてしまった。
「視えるよ。でも、ただ、視えるだけ……霊感なら琳の方が強いよ」
「へっ?」
何言ってんだ?影虎さえ見えないのに!バカにしてんのか!!
思わず徳川の方へ顔を向けると、優しい顔で俺を見ていた。
きゅん、
きゅん、って今、音した?
きゅん、って何の音だよ?
あ、いや、違う、そうじゃなくて、
「俺、何も見えないぞ!」
見えるなら影虎みたいのに。
「見ただろ?黒い影」
「あっ、」
忘れてた。そうだ、クローゼットから出てきたんだ。
「琳は自覚なしの霊感体質だって言っただろ?琳の場合は引き寄せタイプなんだ。歩くだけで霊体が着いてきちゃう。」
「はっ?マジ!何それ?じゃあ、うじゃうじゃいるの?」
「ほっといたら、五千人規模」
「はああ?何それ?B'zのライブじゃあるまいし!」
ドームか?俺はドームなのか?
徳川は俺のセリフの後に笑いだした。
「琳って、B'z好きなんだ?」
「き、嫌いじゃないけどさ、た、例えだよ……マジでそんなに?」
「普通ならね。でも、琳の光は眩し過ぎるから、余程強い霊体じゃないと近寄れない。全部弾くんだよ。引き寄せては弾く……そんな感じ」
「光?」
「琳が持つパワーだよ。強過ぎて弾ける。だから、近寄る奴は力が凄いヤツばかりなんだ。……だから、厄介なんだよ。さっきの死神みたいなのが来る」
「ま、マジで……」
背中がゾクッとした。
もう居ないけど、思い出してしまったみたいで、寒気が。
「でも、影虎の方がかなり強いからね。だから、助かった」
影虎………、
影虎って強いんだ。
……うん、影虎は強い。小さい時に大型犬に噛まれそうになった時に影虎が助けてくれた。
確か、シェパードだったっけ?
影虎は柴犬。大きさが違うのに勇敢だった。
一歩も引かずに俺を守ってくれた。
「うん、影虎は強い子だから」
えへへと笑って答えると徳川はまた、俺の頭をグリグリ撫でてきた。
「朝から寝坊したのも、ケータイ隠したのも影虎がしたんだ。電車に乗せない為に」
撫でながら、そう言われた。
あっ、確かに携帯はベッドの下にあった。
「学校でガラスが割れた時も死神の仕業なんだけど、影虎が逸早く教えてくれた」
徳川の口から聞く影虎の話は俺を泣かすには充分で、
グイッと徳川に抱き寄せられた。
「たから、我慢するなっつーの!」
俺を抱きしめて背中をポンポンされて、
くそう!
不覚にもまた泣いてしまったよ。
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