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レイカンタイシツナンデス 3話

◆◆◆◆ 「りーんちゃん、手伝おうか?」 馴れ馴れしく名前を呼ぶ声に振り向く。 そこにはいつも俺をリンちゃんと呼んでからかう生徒がニコニコして立っていた。 視線感じたのはコイツか!! 気のせいじゃなかったんだ。 俺は何ビクビクしてんだ? 昨夜の事でちょっと過敏になってたんだな。 「こら、リンちゃんじゃない!林田先生だ」 「いいじゃん、リンちゃんの方が呼びやすいもん」 俺の言うコト聞きやしない。 俺の側に来た生徒は確か……3年生で、 えっと、名前は……… 「田代、なんでここに居るんだよ?」 田代だ。サッカー部のキャプテン。 キャプテンと言ったら翼って言いたくなるのは俺だけか? 「うん?部室に行こうとしてたらリンちゃん見かけてさ、手伝ってやるよ」 「い、いいよ。部室行くんだろ?」 「遠慮するなってリンちゃん」 田代は俺の頭をワシワシと撫でる。 あー、もう、徳川といい、コイツといい、何で頭を撫でたかるんだよ! パシッと田代の手をはたいて、 「俺は先生だぞ!」 と威厳を見せるように強く言ってみる。 「ちえっ、」 田代は拗ねたように俺に背を向けた。 ちょ、ちょっとキツく言い過ぎた? 「田代?」 大丈夫かな?と声をかけると、 「徳川には………撫でさせるくせに」 「えっ?」 田代は振り返り、 「リンちゃん、またね」 と手を振り部室がある方へ歩いて行った。 えっ?あれ?なんて言った? 徳川には撫でさせるくせに? そう言った? 嘘、いつ見られてたんだ? 確かに徳川は俺の頭を撫でるけど、人前では…… いや、もしかして見られてた? ぐわー!! やばい!! 変な噂たつじゃん! 変な噂たったら…………徳川が。 徳川が………って、俺、何で徳川の心配してるんだ? ブンブンと頭を振り、気を取り直す。 よし!雑用片付けよう。 ◆◆◆◆◆◆◆ 雑用も終わり、教室へと向かう。 生徒は居ないけどさ。 ほぼ、昼からとか学級閉鎖とかしているから静かだ。 そういえば、田代のクラスも学級閉鎖じゃないっけ? キャプテンだからかな? 窓から校庭を見下ろす。 すると、田代がこちらを見上げて手を振っている。 校庭には田代ひとり。 部員は?1人で偉いなあ、田代。 手を振り返す。 「誰に手を振ってんのセンセ?」 フッと耳に息をかけられた。 ブルッと身体が震えて、「ひゃっ」なんて変な声が出た。 「センセ、反応可愛い」 振り返るとニヤリッと笑う徳川の姿。 「もう!耳とかやめろ!弱いんだぞ!」 耳を押さえて文句を言う。 「うん、知ってる」 ニコッと余裕の微笑みな徳川。くそっ!! しかも、知ってるとか。 「センセ、誰に手を振ってたの?」 もう一度聞かれ、「田代」と生徒の名前を言って校庭に視線を向けた。 あれ? 「田代?誰も居ないよ?」 徳川も校庭を見下ろして、そう言った。 徳川の言う通り、校庭に田代の姿はない。 目を離したのってほんの数秒だよな? 去っていく姿くらい見れるはずなのに、そこには誰もいない。 すげえ、足速いのな田代って。 「田代と仲良しなんだ琳」 「へっ?」 視線を校庭から徳川に向ける。 「手を振るくらいに?」 うん?あれ?なんか………声のトーンが低くないか? 「て、手くらい振るだろ?振られたらさ」 「今まで見た事ないけど?」 徳川はそう言って俺に近付いてくる。 しかも気のせいではなく声のトーンが低い。 「いい、いいだろ?別に………俺、職員室戻る」 徳川の横を過ぎようとした時に二の腕を掴まれた。 そして、徳川の腕の中に抱きしめられた。 ぎゅっと力強く。 ば、ばか!教室で!! 焦って徳川から離れようとするけど、 「琳、伏せて」 と徳川は俺ごとしゃがんだ。 その瞬間、 ガシャン!!! と派手な音がして、足元にガラスが散らばった。 えっ?…………なに? 俺は頭が真っ白になって思考回路が停止中。 「琳?琳……平気?」 徳川の声で頷くけど、まだ……なんか良く分からない。 「何だ!どうした?」 勢い良くドアが開いて鈴木先生の声がした。 「うわ、なんだコレ……窓割れたのか?徳川、林田先生大丈夫ですか?」 鈴木先生の言葉で窓ガラスが割れたんだと理解した。 「2人ともこっちへ」 鈴木先生が徳川の腕を掴み、俺は徳川に支えられるようにその場を離れた。 そして、教室の隅っこに転がるサッカーボールが目に入った。

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