16 / 67

レイカンタイシツナンデス 4話

えっ?田代? サッカーボール……… 校庭には田代がいて、サッカー部のキャプテンで。 「サッカーボール?これが飛んで来たのか?」 鈴木先生は転がるサッカーボールを拾い上げる。 鈴木先生と一緒に校庭を見るけど、誰もいない。 「誰か校庭に居たのを見たか?」 鈴木先生が徳川に聞いている。 田代がいたのを見たのは俺だけ。 「見てません。林田先生もきっと見てません。俺と話してたから」 キッパリと答える徳川。 田代に手を振っているのを見ていたのに? 「そうか………サッカー部は全員休んでるからなあ。誰かボールを持ち出したのかな?」 鈴木先生は首を傾げている。 「とりあえず掃除しましょ?」 徳川がそう言ったので鈴木先生もそうだな。と掃除道具を取りに行った。 「琳、大丈夫?」 鈴木先生が教室を出ると直ぐに徳川は俺の側に来て心配をする。 「う、うん、ありがとう」 なんだかんだで、徳川には助けて貰ってばかりだ。 「ほんと、琳は危なっかしいね。」 ニコッと微笑み俺の髪を撫でる。 「ごめん」 ちょっと反省。なんか、助けて貰ってばかりだ。 「どうしたの?素直じゃん?いつもなら頭撫でるなとか琳とか言うなって言うクセに」 確かに……… そうだ、呼び捨てされたんだった。 頭も撫でられて…………いや、ちょっと安心したんだ。 徳川に頭撫でられて、大丈夫?って聞かれるの嫌じゃなくなってる。 ホッとしてる。徳川がいま、ここにいて、凄く安心してる。 でも、絶対言葉にはしない! ぜってえ、徳川が調子に乗るから! 「センセ、今日も一緒に帰ろうね。荷物取りにいかなきゃならないし」 俺の頭に乗せられた手のひらは優しく髪を撫でてくれる。 だから、「うん」なんて頷いてしまった。 ◆◆◆◆◆ 「荷物これで最後?」 管理人さんと徳川がどこからか段ボール箱を貰って来てくれて、それに服やら私物を詰め込んだ。 しかもトラックまで手配してくれて、ありがたい。 「うん」 「じゃあ、持っていくね」 徳川は俺より力持ちで助かった。 管理人さんも手際いいし、………くそっ、トロイのは俺だけか? 「琳、いくよ!」 段ボール箱を抱えた徳川に呼ばれて慌てて後を追う。 トラックに乗り込み、管理人さんにお礼を言った。 走りだして直ぐにサイドミラーに誰か映り込んで、後ろを見た。 小さくなっていく人影。 管理人さんと…………あと1人。 背格好が田代に似ている。 田代なわけがない。 彼の家は確か隣の市で電車の特急に乗って通ってるって聞いた。 俺が乗る電車の路線は同じで、朝、たまに会っていた。 朝、…………あれ? 何か引っかかるんだけど?何だろう? 「琳、もう直ぐ着くぞ」 徳川に頭をガシッと掴まれ我にかえる。 荷物は業者さんと一緒に降ろしたから直ぐに終わった。 徳川の部屋は積まれた段ボール箱でいっぱいだ。 「荷解きは後にして、夕飯作ろう」 徳川は一緒にスーパーに行こうと誘ってくる。 荷物持ちに行ってやろう。作って貰うんだから。 彼のアパートの近くには大きなスーパーがあって、便利そうだった。 しかも、安いし。 「あのさ、徳川、家賃とか光熱費とか食費ちゃんと払うから」 俺はカートを手に徳川の後をついていく。 「家賃はいいよ。食費を半分くれれば」 「だ、だめ!それはだめ!ちゃんと払う」 「じゃあ、半分づつな?」 「えっ?俺が多く出すよ!大人だし」 「琳はそんなに食えないだろ?それに……小麦。2人の時は小麦って呼んでよ」 「えっ?なんで?」 「イイから小麦。呼ばないと琳が嫌いなピーマンをクリームシチューに入れる」 通りかかった野菜コーナーでピーマンの袋を手にする徳川。 ひいいいい!ピーマン、だめ!絶対! 俺は首を振って、 「小麦って呼ぶからやめろ!」 と言う事をきくはめになる。 くそ、俺のばかばかばか! 徳川はニヤリッと勝誇った顔をしていて悔しい。 置いて貰うしな。ご飯もさ……… 名前を呼ぶくらいでイイならいくらでもいいさ。 「琳、向こうみて来るからデザート選んでなよ」 徳川はそう言って鮮魚コーナーへ。 海老とか入れてくれるのかな?なんて密かな願い。 俺はスイーツコーナーへとカートを押していく。 「りーんちゃん」 名前を呼ばれ、思わず「はい。」と返事して振り返った。 でも、そこには誰もいない。 あれ? 確かに今? りーんちゃんって………… 田代の呼び方。………いや、声も田代の声だったような? 空耳かなあ? 俺は周りをキョロキョロと見回し、田代の姿をさがす。

ともだちにシェアしよう!