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ツイテルンデス 2話
「琳、ほら、出て来てよ。ご飯だよ」
シーツに包まった俺は無視してやってる。
ふふふ、困るがいい。大人の恐ろしさを知るのだ。
徳川は俺の身体を揺すり続け、ご機嫌取りに猫なで声だ。
いつも生意気なエロガキめ!もっと俺を労るのだ!ふふふふっ。
「りーん、出てきてよ。悪かったよ。尻撫でてたりして。」
ふふふ、弱気になってきたな。
もう少しだ。
「琳、お詫びに食べたいものを夕食に作ってやるから」
おおっ!!マジか!
何作って貰おうかなあ?
「りーん、頼むから………」
よしよし、もう少しだな。
ふふふ、次はどんな弱気な事言うのかな?
「もう、いい。琳のばか」
はい?なんだと!もう、拗ねたのか?
これだから子供は!!
「せっかく琳が好きそうな朝食にしたのにさ。パンケーキにフルーツのせて、生クリームもタップリ……それにアイスも乗せてるのに……もういい、1人で食う。」
はっ?はあああ?マジすか!
めっちゃ美味そうですやん。
しかも、それを1人で?
それは許さん!!
阻止するべく、勢い良く起き上がった。
そこにはベッドの端でニヤニヤしながら頬杖ついて俺を見ている徳川がいた。
だ、騙したな!
俺はまたシーツを被ろうとするが、ガッツリと身体を捕まえられ、軽々と抱っこされた。
「おろせー!ばか!嘘つき!」
「嘘じゃねーよ」
徳川はそう言うと俺をテーブルの前で降ろす。
テーブルにはさっき言ったパンケーキが。
しかも、美味そう。
ジュルリとヨダレ出そう。
「機嫌直った?」
「うん!」
しょうがないから許してやろう。
「それと、パンツ」
目の前にパンツが。
「捜しておいた」
渡されたパンツは紛れもなく俺の。
俺が寝てる間に捜してくれたのか……徳川いいヤツじゃん。
◆◆◆◆
パンケーキはめっちゃくそ美味かった。
やるな、徳川。尻触った事は許してやっても良いぞ?
「琳、荷解きやろうか?」
しかも、俺の荷物なのに率先して荷解きしてくれる。
いい子!なんて、いい子!
一緒に荷解きしながら、ふと、昨日の壁ドン、いやノックされた事を思い出した。
俺、あんなに怖がってたのに寝てしまったよな?もしかしなくても無神経?
徳川はいつ寝たんだろ?
俺にずっと、大丈夫だよって言葉かけて安心させてくれた……
徳川は平気だったのかな?
視えるんだよね?徳川は………
怖くないのかな?
昨日のも………幽霊だよね?無視してたから。
友人があんな無神経な時間帯にノックしまくらないもんな。
「どうしたの?琳…」
「えっ?」
名前を呼ばれ、顔を上げる。
ニコッと微笑む徳川。そんな徳川に質問。
「………昨日のは霊?」
「うん、そうだよ」
即答か。やっぱり。
「で、電話も?」
「うん、電源切ってもかかってきそうだったから電池パック抜いた。まあ、強力なヤツなら電池パック抜いてもかかってくるけどね」
ほわわ!着信アリかよ!
「な、なんか凄いね小麦……怖くないの?」
「ん?もう、慣れたかな?それにいちいち騒いでもさ。疲れるだけじゃん?奴らもその内飽きて居なくなる」
「えっ?飽きるの?幽霊ってずっと憑いてるもんじゃないの?」
「一時的しか憑いてこない奴らばかりだよ。よほど、憑いている人間に執着してないかぎりね」
徳川はそう言ってニコッと笑う。
笑うとのなのか?執着かあ。……あの死神みたいに?
「だから、琳は俺が護ってやるよ」
「はい?」
「執着されてるからな琳は」
「はっ?し、死神?」
「ううん、死神はね、影虎が狩ったから居ない。死神に紛れてもう1匹きてた」
「えっ?えっ?うそ?」
俺は周りをキョロキョロとみる。
当たり前だけど、何も見えない。
「かなり質が悪いから、俺から離れるなよ。それとコレ」
徳川が綺麗な石がついたストラップを渡してきた。
「ラピスラズリ。魔除けみたいなもの」
ラピスラズリ……聞いた事ある。すげえ、綺麗な青い石。
「いいの?貰っても?」
「うん、琳は持ってた方がいい」
「ありがとう」
素直に受け取る。
優しいな徳川。……俺は他人なのに……色々とさ。
「なんか、お礼したい……昨日も守って貰ったし……部屋に置いて貰ったしさ」
「お礼?なんでもいいの?」
「うん、高いものとかはあんま、買えないけど、あ、あと、料理は作れないよ?」
「抱っこさせて」
「はい?」
「琳を抱っこしたい」
徳川はそう言うと、おいで、なんて両手を広げる。
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