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ツイテルンデス 3話

「いや、違うお願いを」 「琳、はやく!」 躊躇する俺を急かす徳川。この、せっかちさんめ! ううっ、冗談でした。なんて言うタイプじゃないもんな徳川は。 お願い利くとか言っちゃったし。俺のばか! でも、こんなお願いされるとは思わなかったしさ。 「あー、もう世話の焼ける!」 グズグズしている俺に業を煮やした徳川は、俺の側にきて、身体を引き寄せた。 「ちょ、小麦!」 ジタバタ暴れる俺。 だって、膝の上に横抱きですよ?はたから見たらラブラブカップルだよ? 「うるさい!黙って抱っこされてろ!」 ぎゅっと肩を抱き込まれた。 徳川の肩辺りに俺の顔がきて、……なんか、いい匂いする。 「琳、甘いにおいするね。」 「えっ?小麦の匂いでしょ?パンケーキ作ってたから」 バニラエッセンス的な甘い香り。 嫌いじゃない。 「違う、琳の匂いだよ。」 徳川は俺の髪に唇をくっつけた。 「ちょ、なにして」 「チュウだけど?なに?また唇がいい?」 徳川は指先で俺のアゴをくいっと上げる。 そして、近付いてくる顔。 「ちょーーーー、ちがーう!」 慌てて顔を背ける。 「いまさら?琳の初めてのチュウは俺じゃん?」 ぐわっ!やめれ!思い出させるな! 「小麦が!!!」 文句を言おうと顔を上げた瞬間に待ってましたと唇を塞がれる。 くちゅ、……すぐに徳川の舌が絡んできた。 「んんっ」 今日はキスに屈しない!いつも、やられっぱなしな俺じゃない。 顔を背けて、キスから逃れる。 「ほんと、琳って隙多い」 ペロリと舌を出す徳川。 くそ!勝ち誇ってやがる。 しかも、舌……えろい。 この舌が毎回俺の口内に……… ……でも、気持ちいい。 徳川のキスは……エロくて、気持ちいい。 「物足りなさそうな顔」 ニヤリッと笑われた。 そ、そんな顔してるのか俺は? 「んな、わけあるか!」 俺は徳川の膝の上にから降りるべく、ジタバタ。 「琳、太ももエロい」 足をバタバタするから裾が上がって露わに。しかも、そこに手を置いてくる徳川。 いや!セクハラ! 「琳、………ちょっとイイコにしてて」 そう言うと俺をぎゅむうううっと抱きしめてきた。 「こらあ!離せ!」 俺が叫ぶと、 『そうだああああ!はなせええええ』 と声が部屋中に響いた。 俺でもない。 もちろん、徳川でもない…… 誰かの声。 「や、なに?」 驚いて徳川をみる。 「琳に執着してるヤツだよ!昨日から散々邪魔しにきやがって」 徳川は窓側を睨みつける。 窓ガラスが何かに共鳴するように震え、音が出る。 なに? 台風の時に窓ガラスが震えるとは全く違う。 初めて見る光景だった。 『ハナレロ、センセイカラハナレロ』 声が部屋中に響く。 昨日の声だ。 俺はとっさに徳川にしがみつく。 べ、別に怖いわけじゃないからな!! 徳川も怖いかな?って思ってさ。 徳川は俺をギュッと力込めて抱きしめてきた。 「琳、大丈夫だから」 徳川の声と言葉に凄く安心する。 「何、アレ?アレが俺に?」 窓の向こうに居ると思われる何かをチラリと見る。 「そう………昨日は逃がしたけど、今日は逃さない」 徳川は俺を離すとベッドから降りた。 「こ、小麦」 「大丈夫、直ぐに戻るから。ベッドの上に居れば大丈夫だよ」 徳川はそう言うと玄関へダッシュ。 えっ?外行くのか?危ないんじゃ? 「小麦!」 名前を呼んだ時にはもう、外へ飛び出していった。 ううっ、大丈夫かなあ? 俺はベッドの上で膝を抱える。 徳川…………っ。ううん、小麦。 小麦には何が見えているのかな? 俺にはサッパリで。 もし、見えてたら今頃正気じゃないよね? そう考えると小麦ってすげえ。 強い。 大人の俺よりも、遥かに強い。 まだ、子供のくせに。 子供のくせに………小麦はすげえ。 うん、ほんと、すげえ。 キスも上手いし……… キスかあ。………俺は自分の唇をそっと指で撫でる。 小麦とのキスが初めてなんだよなあ。 ファーストキスかあ。中学生の頃、クラスの男子とキスするならアイドルみたいな可愛い娘がいいとか騒いでた。 小麦は確かにアイドルみたいだ。 うん、可愛いし、いや、綺麗だ。 小麦が女の子だったらなあ。 女の子……………、小麦は俺が男でもイヤらしい事したいとか言ってたもんな。 それって、なに?俺を好きって事? 好き? えっ?えっ?好きなのか?俺を? そう考えると顔が熱くなってきた。 ひえええ、もう、ダメだ。思考回路ショートしそうだ。 ブブブブブ、ブブブブブ、 バイブの音が鳴り響き、ちょっとビックリした。 まあ、おかげでショート寸前で正常に戻ったけども。 携帯を取りにベッドから降りた。 携帯を取ると、鈴木先生から。 なんかあったのかな? 「もしもし、お疲れ様です」 「あ、林田先生?お休み中にすみません。あの、実はお願いがありまして。俺の代わりに学校に行って貰えてませんか?子供が熱を出して今から病院へ」 なに!!まじすか! 「えっ?大丈夫なんですか?お子さん?分かりました。先生の代わりに学校行きますよ」 「すみません。助かります」 安心したような鈴木先生の声。 よし、学校行くか! 俺はちゃちゃっと着替えて、仕事に行く準備をした。

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