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オハライシタインデス
◆◆◆◆
やばい!やばいだろ!
俺は小麦を意識しながら、部屋の真ん中で荷物をゴソゴソしている。
結局、手を繋いで帰ってきた。
ラブラブカップルじゃん?
部屋に戻ると俺は緊張に耐えきれずに、
「に、荷物を片付けようーと!」
棒読みな台詞を言って、小麦の手を振り解き部屋へ上がった。
で、ダンボールをゴソゴソとしているわけだ。
「琳」
名前を呼ばれビクッとなる。
えっ?やるの?マジで?
そう考えたら身体が硬直する。
「な、なに?」
ガチガチに緊張した俺は小麦の方を見れない。
「琳は洋服畳んで?俺のクローゼットまだ余裕あるから」
「う、うん」
小麦は他のダンボールを開けてゴソゴソしている。
あれ?するんじゃない?
手伝ってくれる小麦。
や、やっぱ、あれは冗談か……小麦め!大人をからかって!!
俺は立ち上がり服を両手いっぱい抱え、そのせいで足元が見えず、何かに躓く。
おわっ!
服が両手から落ちて、俺も転びそうになる瞬間に小麦の両手が俺を捕まえた。
「まったく!」
真後ろから小麦のクスッと笑う声。
ぐううう!!また、やった!
「わ、わりい………」
小麦にお礼を言おうと彼の方を見た瞬間、唇を塞がれた。
!!!
こここ、小麦!
ガッツリ捕まえられ、俺は落とした服の上に押し倒された。
シワになるだろ!!
文句を言おうにも言えない。
「んんッ」
必死に顔を背けようとしても、ガッツリ固定。
ニュルリと入ってくる舌。
小麦の舌………逃げれない。
手でどかそうとしたら、その手を捕らえられ床に押しつけられた。
そして、指が絡んできて、そのままギュッと握られた。
キスしながらの両手、恋人繋ぎって何なん?
小麦の唇が離れ。
「期待してる?」
と聞かれた。
「はっ?」
「琳、めっちゃ、指を絡めてきてるからさ。あと、舌も」
「はっ?はあああ?んな、んなわけないだろ!」
俺は驚く、だって、ガッカリ絡めているのは小麦。
小麦だもん。俺は……俺はそれに応えただけ………………ってええ、絡めてんじゃん!!
「キスも段々上手くなってきたし」
「えっ!マジ?」
俺、キス上手くなった?
「なに嬉しそうな顔してんだよ」
クスクス笑う小麦は捕らえた手を離すと、俺の髪を撫でる。
「ほんと、琳って可愛い」
そう言って額にキス。
「さて、荷解きしますか!」
小麦は起き上がる。
えっ?あれ?……しな、しないの?
って、待て!待て!俺!
なんで、しないの?とか思うんだよ!バカか!
「う、うん、」
俺も起き上がる。
◆◆◆◆◆◆
………あっという間に終わりました。 はい。
「俺の荷物、結構占領してるな、ごめん小麦」
小麦の部屋には俺の荷物が半分占領している。
「いいよ?ほら、荷物も片付いたし、おいで」
小麦はベッドに座り俺を呼ぶ。
「犬か!!」
「琳はネコだね。大きい瞳の可愛い長毛種」
「そういう小麦は大型犬だ!」
「はい、そんな会話はいいから、ここに来る!!」
小麦は自分の太ももをポンポンと叩く。
そ、そこに座れと?
「いきません!!」
俺は頑なに、その場に座りクッションを抱える。
恥ずかしくていけるか!!ばか!
「ほんと、手間のかかる!」
ぎしっとベッドが小さくきしみ、小麦が立ち上がる気配がした。
こっちに来る!
無理やり抱っこする気か?と身がまえるが、俺の後ろを通り過ぎた。
「琳、コーヒー飲む?」
そう聞かれて頷く。
あ、何だ………。
ホッとするよりも、心がきゅうっと締め付けられた。
なんで?きゅう?
小麦はキッチンでコーヒーを作っている。
ちえっ、
………んん?俺、いま、ちえっ、とか言った?
いやいや、まさかね。
俺はその場に寝転ぶ。
ふと、ベランダへ視線を向けると、長毛種の猫がベランダ伝いに歩いている。
「ねこ!」
慌てて起き上がる。
「小麦、ねこだ!ネコ!どこの子かなあ?可愛い!」
俺はネコも好きだ!!
「最近、よく見かけるんだ。確か、俺くらいの歳の可愛い顔した男の子が飼ってる。アパートの横の公園でその猫と飼い主みるから」
「へえー、名前なんていうのかなあ?」
ベランダに出たら逃げるかなあ?
じーっと見てたら猫が気付いてコッチをみた。
「わあ、可愛い!ネコちゃーん名前なんですかあ?」
俺はベランダに近寄る。
猫はコッチにきて、窓をカリカリする。
急いであけると、中へスルリと入ってきた。
「うわ、フワフワ!!小麦、ほら、フワフワ」
猫を抱っこすると凄くフワフワだった。
猫は俺をじーっとみている。
やーん、照れますやん!!
でも、俺を見ているわけじゃなく、視線が何かを追っている。
何もない方をじーっとみる。
「どうしたの?」
「見えるんだよ、その猫には影虎が」
小麦がカップを持って戻ってきた。
「そっか、動物って視えるんだっけ?いいなあネコちゃんは」
影虎が見えて。いいなあ。
小麦も猫を触る。
くしゅん!
小麦がクシャミをする。
「風邪?」
「いや、俺、動物の毛アレルギーなんだ。」
えっ!!ダメですやん!
「ご、ごめん!」
俺は慌てて猫をべランダへ。
猫はそのまま、どこかへ行ってしまった。
そして、俺は「着替えるね!」と服を脱ぎ、着替えを出す。
小麦、動物の毛アレルギーとは……
「ごめん」
「何謝ってんの?」
小麦はクスクス笑う。
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