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ガマンデキナインデス 16話
◆◆◆
「リーン、何拗ねてんの?」
湯船の中、俺は小麦に抱っこされて不貞腐れている。
「うるさい、バカ小麦!」
「そんなに童貞卒業したかったの?」
ストレートな質問、お前、ちょっとはオブラートに包めよ。
「なんで俺が小麦にやられてんの?」
「琳、ほっぺ膨らんで可愛い」
小麦は俺が怒ってんのに全く反省もしてなくて、俺のほっぺをつつく。
「琳の怒り方って可愛いよね。虐めたくなる」
小麦は俺の前に両腕をクロスさせて抱き締めてきた。
「はーなーせー!」
馬鹿小麦、俺は怒ってんの!
「琳、怒んないでよ」
耳元でまたイケメンボイス。
「ね、機嫌直して……琳の好きな物作ってあげるから」
優しい声。小麦の声って本当に好き……甘かったり、優しかったり、カッコよかったり。
女の子が男性声優にハマるのわかる気がする。こんな声を耳元で聞かせられたらとろけるやん?
……って、なんで俺とろけてんの?
「琳、なんか喋ってよ」
優しい声から悲しそうな声。これも好きかな?
もうちょっと虐めてやろうかな?
「琳……すきだよ」
くそっ!なんて卑怯な言葉を!!愛の言葉を囁くとは!高校生のくせに。
振り向いて生意気だぞ!と言おうと思ったのに唇を塞がれた。
好きの後にキスとか……どこの恋愛ドラマだ!こいつ、どこでこういう事を学んでるんだよ?
くちゅって……舌が絡まってきて……、俺、小麦のキス好きなんだよ。
気持ち良くしてくれるから。
俺も舌を絡めると、身体を小麦の方へ向けさせられた。
俺は小麦と向き合って、何度もキスをした。
唇が離れると「琳、機嫌直った?」と聞かれた。
「まだ」って答えるとキスを続けられて。気付くと俺は小麦に抱き着いて夢中でキスをしていたのだった。
◆◆◆
風呂から上がると小麦が髪を乾かしてくれて、「はい、アイス」とアイスを渡された。
俺が好きなブラックモンブラン。
ちゃんと俺の好きなアイスを冷凍庫にスタンバイしてるって最高だな小麦。
「良かった、ちゃんと機嫌直ってる」
俺の前に座って微笑む小麦。
くそう!可愛いんじゃ!!
仕方ないから許してやろう!俺は大人だからな!!
「琳……童貞卒業したい?」
真顔で聞かれて、アイスを吹き出しそうだった。
「そ、そりゃ……男だし?小麦の可愛いとこみまいし?」
しどろもどろになる。
「……そんなに童貞卒業したいんならやられてもいいけど……なんていうか」
「なんていうか?」
「俺が琳を抱きたいからだーめ」
「は?なにそれ?」
「いつか、ちゃんと卒業させてやるからさ、それまで我慢してよ」
「えー、なにそれ!何で小麦が主導権もってんだよ?」
「だって、俺の身体じゃん?」
あ、そーか?と思ったけれど「俺は小麦に好き勝手されてる!」と叫んだ。
「琳は俺んだもん」
しれっと言いやがった。なんだよ、それ!!
「そういうなら小麦だって、俺のだよ!俺だって我慢できないんです!」
そう叫んで我に返った。
「琳!!もう1回言って?俺は琳のなに?」
小麦はすげえ、嬉しそうに俺に抱き着いてきた。
「ば、ばか!もう言わない」
くそ恥ずかしくなってしまった。
「言ってよ!琳は俺がすき?」
「……す、好きじゃなきゃやんないだろ!キスもエッチも!!」
ヤケクソで叫ぶ俺ってなんなん?
「俺も琳が好き !大好き!一目惚れだからな!絶対に俺のにするって」
小麦はそう言って俺を押し倒した。
「琳……好きです。俺と付き合ってください」
「は?今頃それ言う?順番おかしくない?そもそも、付き合ってなかったのかよ?」
「だって、琳、好きとか言ってくれないし、付き合ってくださいも言えなかったから」
た、確かに……。俺、言わないよな。
「わ、悪かったな……言わなくて」
「じゃあ、返事は?」
真顔で聞かれて「……お、俺も好きだよ!」と答えた。
「付き合ってくれる?」
「い、いいよ?でも、内緒だからな!俺、首になる」
「もちろん言わないよ!やった!」
小麦は俺に乗って抱き着いてきた。くそ、重い。
あー、なんか俺ってもしかしなくても、生徒と付き合っている事になるんか?
恋人が年下の高校生とか……どこのBLだよおおおお!!
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