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カクゴデキテルンデス

◆◆◆ 「琳ちゃん先生、最近さ凄く楽しそうだけど、何かあったん?」 生徒に言われた。 「えっ?俺、楽しそう?」 「うん、鼻歌しょっちゅうだし、ニコニコしてるし、まあ、ニコニコはいつもだけど、そのニコニコが何ていうか……んー、あ!幸せそう?」 考えながら答えて、ポンと手を打つリアクションまでしてきた。えー、俺、鼻歌とかしてるん? 自分ではわかんないんだ。 小麦に告白されて、いや、毎回好きですっては言われていたけど、きちんと告白されてから数日経っていて……まさか、俺の浮かれようって小麦? 「琳ちゃん先生?おーい」 目の前で手がチラチラして、ハッと我に返る。 「あと、上の空もつけたして」 他の生徒が会話に乱入してきた。なんなん?上の空って。 「もしかして……恋人出来たとか?」 ドキッとしまくった俺。別に小麦の名前を出されたわけではないのにドキドキして「えー、そんなんじゃないよー」と答えたが「先生、言葉……棒読みですけども」と突っ込みを受けた。 「え?マジで恋人できたんですか?」 「えっ?何?」 他の生徒も沢山加わりザワザワし始めた。 「あー、もううるさい!」 俺は周りを一喝したけれど、威厳もなにもない俺の一喝なんて誰も聞いてくれない。 「あー、徳川」 ザワザワした雑音の中、誰かの声で小麦の苗字が呼ばれて胸がきゅーとなった。 「んー、どしたの?ザワついてる」 小麦はどこかへ行ってたらしく、教室へ戻って来た。 「琳ちゃん先生に恋人出来たらしいよ?」 生徒の1人が小麦に教えている。その言葉で俺も小麦も言葉を放った生徒を見たもんだから……2人目があった。 ドキドキとした。何だろ?いつもより、ドキドキが凄くて。 小麦は俺を見て口の端だけで笑った。 その顔もなんか、なんて言うか……あー!!ドキドキの原因になる。 俺は乙女か!と自分突っ込み。 「恋人ねえ」 意味ありげに微笑み、自分の席に座る小麦。 「林田先生、次の授業間に合いませんよ?」 小麦が黒板の上にある時計を指さす。 あ!!そうだった!次の授業がある。俺は教室から逃げるように出た。 一応、逃がしてくれたんだよな?小麦……。 俺が質問責めに合わないように。 と、年下のくせにいいい。粋な真似を。 そんな年下の行為にきゅんときている自分がちょっと恥ずかしかった。 ◆◆◆ 昼休みになる頃には俺に恋人ができたらしいという未確認情報から、もう結婚前提の付き合いらしいとい噂にチェンジしていた。 ほんと、又聞きって怖い。 「琳ちゃん!!」 廊下を歩いていると目の前に泣きそうな顔の田代が立ちふさがる。 「婚約したんですかああ!!」 「は?」 「徳川とこん」 「うわあ!!」 田代の口を慌てて塞ぎ、階段の隅へ。 こんなところで小麦の名前を出されたらほんの数秒で職員室まで小麦との事が届く。 「田代!」 口元に指を持っていって、黙れのポーズ。 「真実なんですねええ」 うりゅうと涙が。 「ちが、違うから!」 婚約は本当に違うので訂正した。 「勝手に俺のクラスの奴らが話を大きくしただけだよ」 「じゃあ、婚約は?」 「まだしてない」 「まだって何ですか?これから先、予定あるんですか!」 訴えるような田代の言葉に自分でも、まだという言葉を使った事に驚いている。 「うるさいですよ」 迫力のある声で言ったのは俺じゃなくて、小麦だった。 いつの間にか俺の後ろにいたみたいで、少し迫力のある声を出した。 「徳川ああ!!」 小麦当時で田代物凄く泣きそうな顔。 「大丈夫です、琳は俺が幸せしますから」 ニコリと微笑む小麦。まるで、結婚宣言っぽい。 「じゃあ!先輩は受験頑張ってください」 小麦は俺の手を引っ張り、その場から連れ出す。 「ちょ、どこいくんだよ」 「屋上」 「屋上?」 手を引っ張られながら屋上へきた。 「ん、昼飯」 屋上で小麦に弁当を渡された。 「ありがとう」 「多分、恋人疑惑……その弁当も原因だと思う」 小麦は日影になるところで座る。俺もその横に座る。 「琳はずっと、パンとかコンビニ弁当だったろ?それが最近は手作り弁当を食べてる」 「あ……」 確かにと思った。小麦と暮らし初めてから弁当を作って貰っていたのだ。 俺が作らなきゃならないんだろうけど、なんせ年上だから。 「職員室へ戻るのもきっと、生徒の噂とか他の先生にも伝わっているからからかわれるんじゃないかって思ってさ、屋上に誘った」 そっか、それで探してくれてたのかな?優しいな小麦。 「ありがとう」 礼を言って弁当の包みを開ける。 「まあ、本音は琳と2人っきりになりたいだけなんだけどね」 ぐはっ!! 俺は口に何も入れていなくて良かったと思った。吹きそうだったから。 「くそ!色気づきやがって!」 照れなくしにそういう大人気ない事を言うくらいにテンパっていたに違いない。

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