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オハライシタインデス 5話
◆◆◆◆
「くしゅん!!」
風呂から上ってもくしゃみが止まらない。
マジで風邪引いたかな?
「琳、とりあえず薬」
小麦が救急箱から風邪薬を取り出して俺に渡す。
「んっ、ありがとう」
素直に受け取る。
「今夜は身体温まる物にしようか?」
「小麦ってなんか、母ちゃんみたいだな」
俺より大人だし。
「せめて、彼氏だろ?」
「ぶはっ!!」
薬を飲む為に口にふくんだ水を吹き出してしまったよ。
コイツは突然変な事を言い出すのが得意だ。
「もう、琳はマジで世話がやける!!」
小麦は呆れながらに吹き出した水をタオルで拭いてくれた。
ううっ、マジで情けない。
◆◆◆◆◆◆
風邪薬を飲んだし、大丈夫だと思っていたのに、夜になると、
「琳、38度ある」
体温計の数字を見ながら小麦は心配そうに俺をみる。
俺は滅多に風邪引かないし、熱を出した事なんてあまりない。
かなり久し振りかも。
「ん、寝てれば平気だと思う」
俺は小麦に悪いなあって思いながらベッドに横になる。
「あ、でも、俺がここに寝たら小麦に移しちゃうな」
気づくのおせーよ!って俺は慌てて起き上がる。
「何言ってんの?同じ空間にいるわけだし、感染るんならとっくに感染ってるだろ?ほら、寝て。俺は平気だから」
ベッドにまた戻されて、額に熱冷ましシートを貼られた。
「何から何まで……マジで小麦は母ちゃんだ」
夕飯も美味しかった。
「だから、彼氏だろ?」
小麦はそう言うと俺の隣に入ってきた。
そして、俺を抱き寄せて、
「なんか、カイロみたいだな」
なんて言う。
いつもなら、ダメだって怒るんだけど、なんだかなあ?熱があるからかな?
安心する。
俺は小麦の胸に顔を寄せて目を閉じる。
「なに?琳、どーしちゃったの?熱あるからかな?」
甘えるような俺に小麦は嬉しそうな声でそう言って抱きしめた。
◆◆◆◆◆
寝苦しい…………
身体の熱さのせいで喉が渇く。
目を開けると部屋の中は薄暗くて、
隣から小麦の寝息が聞こえ、あのまま自分は眠ってしまったんだと思った。
ゆっくりと起き上がり、水を飲みたくてフラフラとベッドから降りた。
足が床について立ち上がろとしたけれど、クラリと目眩がして、床に座りこむ。
「くう~ん……」
犬の鳴き声がして、顔を上げた。
目の前に犬が居る。
尻尾をパタパタと振っている犬…………
首にかげとらって書いてあるバンダナ。
「か、影虎?」
名前を呼ぶ………影虎の名前を。
手を伸ばしてみると、フワっとした毛の感触。
うそ………触れる??
「かげとらあ………」
俺が名前を呼ぶとまた、パタパタと尻尾を振る。
うそ、うそ、うそ!!みえる!!
影虎かみえる!
「琳?なにしてんの?」
後ろから小麦の声。
「影虎がみえる!!」
小麦の方を振り向いて、そう言う。
見えるんだよ!影虎が!!
昔のままの影虎が………
「へっ?ウソ?」
小麦はベッドから降りて俺の側にきた。
「ここにいるだろ?」
俺は影虎がいる場所を指差す。
「居るよ、そこに尻尾振って」
「うん………みえる………」
俺は影虎の頭を撫でる。
懐かしい感触。
キラキラした瞳。尻尾を振る音。
全部、全部昔のまま。
「マジで見えてんのかよ、しかも触れるなんて……」
小麦が驚いている。うん、俺も驚いている。
「なんで急に?」
小麦の疑問は俺も感じた事。
なんで、いま、見えるんだろう?
「もしかして熱のせい?」
俺と小麦の声がかぶる。
俺は熱のを出すとたまに幻覚をみていた。
フワフワ浮かぶ人とか、色々。
熱があるせいだと思っていたけど、あれは………………もしかしなくても、幽霊?
俺って実は視える人?
小麦が俺を霊感体質って言ってたもん。
「まあ、とにかく、ほら、琳、ベッドに戻れ」
腕を捕まれた。
「やだ!!影虎なでる!」
腕を振り払おうとするけど、元々、体格の差で振りほどけない。
「だめだ!」
「やだ!!」
俺は頭をブンブン振って抵抗。
「あーー、もう!ほんと、世話の焼ける!」
そういうと小麦は俺をヒョイと抱き上げた。
「やだ!まだ、なでる!」
抱き上げられてジタバタと暴れる俺はあっという間にベッドに連れていかれた。
「うーー、小麦のばかあ」
いう事を利いてくれない小麦を見上げる。
「なに、泣いてんだよ。ベッドにいても影虎触れるだろう?」
そう言われ気づく、影虎はちょこんとベッドの上にいる。
あ、そっか。
なんで、あの場所でしか触れないと思ったのだろうか?
俺はたぶん、思考回路がちゃんと機能していない。
小麦に頭を撫でられ、
「良かったな、影虎みれて」
と微笑まれた。
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