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オハライシタンデス 7話

この人は小麦の何だろう? 呼び捨てだし…… それに、この人って何者? 俺は首を傾げる。 すると、目の前の男性はふふっと笑って俺の頭を撫でた。 「ほんと、噂以上に可愛いねリン先生は。小麦が気にいるのも分かる。なんか、モフモフな子犬みたいだ」 モフモフな子犬…… 何を言ってんだ~?この人は? 「リンにあまり触んないでくれる?いくらマサ兄でも許さない」 「触んないと診察出来ないけど?」 2人の会話が理解出来ずにいると、男性の手が額に。 「結構、熱あるね」 そう言って俺を軽々抱き上げた。 うわっ!! なんて、声にならない声をパクパクさせる。 「ちょ!!マサ兄!!」 小麦の慌てる声。 「診察するから小麦はそこにいろ」 「やだね!」 小麦はそう言うと後ろをついてきた。 ◆◆◆◆◆ 治りたくない!! 俺の願いは届かず、っていうか、力出ないから抵抗出来なくて診察を受けるはめに。 一応インフルの検査も無理やりさせられた。 あの検査は苦手。 診察は終わり、俺は診察室の隣の部屋に寝かせられている。 「リン、まだスネてんの?」 小麦に話しかけられてるけど、億劫だから返事は返さず。 「まあ、スネても可愛いんだけどね」 小麦はそう言うと俺の頭を撫でる。 何がスネても可愛いだよ?大人に向かって失礼な!! 「リンの気持ち分からないわけじゃないよ?でも、余計な物まで視えるのは辛いからさ」 小麦の手はまだ俺の頭を撫でている。 彼が言っているのは影虎の事。 まあ、あんだけ抵抗したから…… でも、せっかく視えたのに、視えなくなるのは嫌だ。 嫌だけど……… 俺の頭を撫でる小麦の顔が切なそうで、寂しそうで…… いつも、生意気だからそんな顔されたら調子狂う。 そんな顔させているのは自分だと、いま、理解した。 視えるのは辛い。 それって小麦自身の事かな? 小麦はみえるから…… きっと、凄く辛い思いとかしてきている。 他人に見えないものが見える恐怖。 俺はワガママ? 影虎をみたい。それだけなんだけど。 小麦に辛そうな顔させている。 「こむぎ……」 「ん?どうした?」 「のど、かわいた。」 って、違う!! ごめんだろ?俺のばか! 「わかった、待ってて!」 小麦は微笑むとたち上がった。 頭をくしゃくしゃと撫でて、小麦はベッドを離れた。 小麦が居なくなった瞬間、心がしゅんとなる。 物足りない……さみしい? どの言葉が合うか分からないけど、小麦が居ないってだけで、俺は落ち着かなくなるんだ。 変だよね。なんでだろ? エロガキで生意気で、 でも、嫌じゃないんだ。嫌いじゃない。 小麦に触られたいって思ってしまう自分がいるんだ。 小麦は男で俺も男なのに。触られたいって変だよね? 俺は同性愛者でもない。 恋愛対象は女の子だったのに。 なんで………小麦が気になるのかなあ? そして、なんで、こんな事を考えてるのかなあ? 熱があるからかな? それとも、小麦のあんな顔見たから。 寂しそうな、悲しそうな……そして、泣きそうな。 「こむぎ……」 名前を小さい声で呼んでみる。 「あ~、ごめん、小麦じゃないんだよ」 ふいに聞こえた声に驚き、声がした方をみる。 そこには白衣きたさっきの男性。 お医者さんなんだけどね。 名前……えっと、診察される時に聞いたような? 白衣の胸元にかかっている、IDを見る。 「あれ?リン先生、俺の名前覚えてくれてなかった?」 俺の視線がどこを見ているか気付き笑う。 しまった………恥ずかしい。 「マサハルでいいよ。」 ニコッと笑う顔が少し小麦に似てる。 「小麦、どこいった?」 「のど、渇いたって言ったから」 「ああ、飲み物買いに行ったのか、で、どう?リン先生、少しは楽になったかな?」 マサハルさんは俺の額に手をあてる。 「はい……だいぶ」 「良かった。リン先生の熱が下がらないって小麦がそうとう焦っててさ」 そう言ってクスクス笑うマサハルさん。 「あいつが焦る事ってあんま、ないからさ。愛されてるねリン先生」 マサハルさんの手の温かさは小麦みたいでなんか、安心する。 「あの、マサハルさんって、小麦の?」 小麦のなに? 少し似てるから、親族かなあ? 「マサハルさんって、なんか新鮮。俺は小麦の叔父にあたる。」 叔父………やっぱり!!似てるもん!!

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