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オハライシタインデス 8話
「リン先生の話は小麦から良く聞いてるよ」
そう言って微笑むマサハルさんは小麦の笑い方と似ていて少し不安が無くなった。
「リン先生は霊感あるんでしょ?」
「えっ?」
そんな事まで話しているのか小麦は。
「リン先生が見ている方に犬がいた。可愛がってた犬でしょ?すごく、尻尾振って先生大好きって身体全部で言っている」
えっ?って思った。
この人も視える人?
「小麦ほどじゃないけど、視える人だよ」
心の声まで聞ける人なのか?この人は。
考えている事を答えられた。
「リン先生は熱がある時にだけ視えるのかな?」
マサハルさんの手が額に当てられる。
「小麦がね、そう言ってた。視えなくなるのが嫌だから、病院にいきたくないってダダこねるって」
マサハルさんの手が頬に。
そして、親指かな?唇を触ってきた。
「プニプニ」
そう言ってマサハルさんの顔が近付いてきて、
コツンと額同士があたった。
「熱高いね」
び…………ビックリしたあ!!
キスされるのかと思ったあああ!!
あああ!もう、顔が熱い!!
「マサ兄なんしてんだよ?」
小麦の声が聞こえてきた。
「熱計ってた」
「もうさ、その額で熱計るクセ止めろよ!俺にまでするじゃん!!」
小麦がなんだか怒っている。しかも、さっきの見られてたんだ。
しかも、 小麦もされてんだな。
「リンから離れろよ」
小麦は間を割ってマサハルさんとベッドの間に入ってきた。
「マサ兄、リンに水飲ませるから水差し持ってきてよ」
なんだか威嚇しているように見えるんだけど?気のせい?
「はいはい」
マサハルさんは小麦の頭をワシャワシャっと撫でると病室を出て行った。
「リン、大丈夫?」
額に手をあてる小麦。
「うん、ごめんね。迷惑かけて」
「いいよ、治ったらご奉仕してもらうから」
「うん、わかった」
返事をすると小麦はなんだか驚いた顔をして俺を見る。なんで?
「本当にやってくれんの?」
「うん、するよ?」
「絶対?」
「うん、迷惑かけたの俺だもん。病院に行きたくないとか子供みたいにごめん」
これは本当。
子供みたいだった。俺、先生なのにさ。
冷静になると恥ずかしい。
「じゃあ、指切り」
小麦は小指を俺の前に差し出す。
なんか、小麦のこういうトコ好きだなあ。
大人びて見えるけど、子供っぽい所もちゃんとある。
俺は自分の小指を小麦の小指に絡めて指切りげんまんをした。
子供の時以来だなあ……
「何、子供っぽいコトしてんの?」
マサハルさんが戻ってきて、俺は無事に水を飲めた。
「点滴終わったら帰っていいよ。」
その言葉にホッとした。
入院とかなったら小麦にまた迷惑をかける。
「はい」
俺は返事をして、点滴が終わるのを待った。
◆◆◆◆◆
「リン、ちょっと待っててタクシー呼んでくるから」
点滴が終わり、俺は待合室の椅子にぼんやり座って小麦が玄関を出て行くのを見送る。
シーンとしている待合室。
もしかして、休みだったのかな?
そうだったらマサハルさんに悪い事しちゃったな。
マサハルさんにお礼言わなきゃ……
俺はフラリと立ち上がったものの、目眩で身体が崩れた。
「危ない」
その声と一緒に誰かの腕が俺の身体を支えた。
一瞬、マサハルさんかと思って支えてくれた人を見た。
直ぐに違うって分かった……
白い肌に金色っぽい瞳。
そして、外人さんかな?って思うくらいに彫りが深くて綺麗な顔。
銀色に近い長い髪。
女の人?
でも、「大丈夫ですか?」と聞いてきた声は男性のモノだった。
「は、はい」
返事をすると、良かったって言って微笑むその人。
綺麗だなあ。
しかも、身長高いなあ。
小麦より、ちょい高い………
ああ、くそ!なんで俺ってこんなに小さいの?
「本当に大丈夫ですか?」
その声にハッと我に返った。
「だ、大丈夫です。すみません」
と俺はその人から離れた。
「そう?顔色が良くないですよ?」
綺麗な笑顔のその人は俺の頬に手をあてる。
フワリと良い香りがした……。
甘い……なんの香りかな?
「熱ありますね」
手のひらに俺の体温が伝わったのか心配そうにそう言った。
「点滴したから大丈夫です」
「苦しそうですね。………」
頬にあてられた手のひらは額へと移動する。
なんだろう?凄く………懐かしいような?
「治してあげたいです」
その人は俺の耳元に唇をあててきた。
ん?
あれ?
俺……なにされてんの?
「リン…………もう直ぐ迎えに行くから……」
そう囁かれた。
えっ?
驚いて顔を上げるとその人はもう居なくて……
んん?
あれ?
熱………上ってる?
俺はその場に座り込んだ。
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