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「遺書に書いてやる。”生まれ変わったらアッカーソンになりたい”って」
「”陸軍の抱かれたいランキング1位”にか?」
「ああ、女でも男でも好きなだけ抱いてやるよ」
唇を尖らせて男前な台詞を吐くジャスティンを余所に、アッカーソンは淡々と次期作戦の概要を述べていた。
黒板にざっくりと描かれた地図の上、最前部に”A company”と走り書きが入るや一部の隊員が落胆するのが見て取れた。
前線はまたもやA中隊だ。最精鋭と言われ、最強の攻撃力を持つ彼らには何時も辛い戦いが強いられていた。
A中隊の戦績が賞され、こんな役回りになったのも件のブラックウェルが配属されてからの事だった。一体どんな魔法を使ったのかは知らないが、彼は僅か1月にも満たない期間で落ち零れをエリートに叩き上げたのだった。
「お姫様を護りたい一心で頑張ってんのかね」
「お姫様ってガラかよ」
華奢な体躯に見合わぬトンプソンを担ぎ、ラッキーストライクを咥えて毒を吐く上官の姿を思い返して目を細める。
確かに可愛らしい造形をしているが、あれではまるで…。
「ダン、おい、聞いてんのかてめえ」
聞き覚えのある声にはっとダンが顔を上げると、目の前には顰めっ面をした我が隊の指揮官殿が立っていた。
何時の間にやら説明会は終了し、皆ぞろぞろと食堂を後にし始めている。
「失礼しました、何でしょうか」
「使いだ。持ってけ」
渡された小包に怪訝な顔をしていると、隊長はもう既に後ろ姿になっていた。
「カーライル中尉!何処までですか?」
「A中隊指揮所!」
慌てて背中に叫ぶと、上司は顔だけ此方に向けて答えを寄越した。ダンはジャスティンと目を合わせ、再び小包に視線をやった。
ジャスティンは愉快そうに口笛を吹くと、今日はお使いが多いなと言ってダンの背中を押しやる。
「少尉に会えるかも」
「相変わらずモノ好きだなお前は」
呆れてダンは吐き捨てる様に言ったが、何となく自身もブラックウェルには興味があった。
昔から仕事の出来る人間を好む性質で、そういう人種と話をするのが好きだった。
手土産を探そうとするジャスティンを急き立て、夕食を終えて談笑する兵士達の会合を擦り抜ける。
やがて現れた教会に足を踏み入れると、壁に打ち付けられた間に合わせのプレートに「中隊指揮所」と書かれているのが見えた。
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