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「お話中恐れ入ります、ブラックウェルをお借りしたいのですが」 愚直なまでにマニュアル通り着こなされた降下ジャケット、磨き抜かれたパラウィング(空挺章)、無駄な贅肉の無い引き締まった肉体。 一通り情報をスキャンして導き出されたのは、堅物で芯の強いスポーツマンシップに溢れた人物像だった。マクレガーは何となく嫌な予感がして隣に目をやったが、部下は一寸探る様にベネットを見た後、O・G作戦の会議と判断したのか早々に立ち上がった。 「探したぞ、一先ず事務室まで来てくれるか」 「了解しました…コールマンは何処へ?」 「昼飯だ。時期に来る」 ブラックウェルを伴い、中隊本部の方角へとガタイの良い後ろ姿が遠ざかる。ほんの僅か、煙草を咥えたブラックウェルが振り返って目線だけを寄越した。 杞憂であれば良い。 ベネットの凡そ一部下に向けるものとは言い難い、熱の塊の如き眼差しを思い出してマクレガーは眉根を寄せた。 お前がもたもたしてる間に、何処の誰が攫って行くとも知れないんだぜ。置き去りにしてきた親友にぼやき、ついでに明日の天気が良くなる事を祈って、マクレガーは手摺りに身を投げて大きく空を仰いだ。 事務室にはベネットの部下がタイプライターを打っているだけで、後はコールマンの姿も無く閑散としていた。その部下も両者が入って来るのを見るや、席を立って一言断わると直ぐにその場を後にし、部屋には鳥の囀りくらいしか音が残されていなかった。 机上には先日ブラックウェルが目にしたものより詳細な地図が広がっており、O・G作戦の主要目的であるセントラルブリッジの周りに所狭しと書き込まれていた。 「”橋を奪還せよ”か」 脇に抱えていた書類をデスクに置き、ベネットは部下に倣って色味の無い地図を覗き込んだ。 「俺達の得意な夜間急襲を選ぶとは良い作戦だ」 「ええ。今回の骨組みは誰が?」 「”オックスフォード・グレンジャー作戦”の名の通り、ウチと隣の連隊長様だよ。まあ実質考案したのはマクレガー大尉だろうが」 まあ、そうだろうなとは思っていたが、矢張りその通りだった。 さっきまで隣で自分を慰めてくれていた上司は今回の大イベントの主要プランナーであり、にも関わらず一介の少尉の隣で悠長に雑談の傍ら煙草をふかしていた様だ。

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