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明け方の日が昇る頃、506連隊は既に勝利の祝杯を挙げていた。兵士がこぞって記念撮影のため橋に押し掛ける中、オックスフォードはアッカーソンらを伴って損害の確認を急いでいた。 マクレガーはブラックウェルが帰って来るや一番にその背中を叩いて労ったが、当のブラックウェルはそんな事よりも彼の血だらけの軍服に目を丸くして固まった。 事情を説明されて納得はしたものの、出発前にあれ程前線に近付くなと注意したのは聞いていたのだろうか。眉間に皺を寄せたまま、またもやブラックウェルは目の前の男から煙草を奪い取った。 「おおブラックウェル、ご苦労だったな!矢張り要はお前に任せるに限るわ!フハハハ」 オックスフォードが相も変わらず1キロ先まで届きそうな声量で笑いながらやって来たため、思わず半歩下がってブラックウェルは謝意を述べた。 アッカーソンなど隠しもせず思い切り顔を顰めている。挙句の果てにはもう良いから引っ込めとばかりに、連隊長の肩を押して指揮所の方角へと追いやり始めた。 「お前が捕縛した将官だが見事な男だな、全く喋らん」 マクレガーがアッカーソンとオックスフォード両名の攻防を観戦しつつ、こっそりとブラックウェルに耳打ちした。 「それどころか紅茶を要求してきて困ってる。今うちの連隊には黴の生えた珈琲豆しか無いからな」 「その辺の雑草でも煮出しておけば良いでしょう」 「妙案だ。あそこに生えてる草でも取って来るか」 2人がいつもの軽口を叩き合っている間に、勝利をもぎ取ったアッカーソンが帰って来た。煩わしそうに降下ジャケットの下のネクタイを緩め、待機していた従卒から記録用紙を奪い去り、唐突に部下を呼んだ。 「――…マリア、来なさい。話がある」 踵を返し、既に後ろ姿の上官がひらりと片手を振った。ブラックウェルは慌ててその背中を追い掛け、広場を過ぎて少々入り組んだ教会前の裏道に入る。 表通りを数台のジープが走り去るのを見送った後、アッカーソンは部下に向き直って如才ない笑みを湛えた。 「中隊長代行ご苦労。お前が居なければ作戦は決壊していた。本当に良くやったな、銀星章でも送ってやりたい位だ」 飾りない賛辞の言葉に、ブラックウェルは一気に顔が熱くなるのを自覚した。俯いてどうにか恐縮のセリフを紡ぐや、アッカーソンの大きな手が伸びて頭をくしゃりと撫ぜた。 「それで本題だが、ベネットが復帰するまで任されてくれるか。2、3ヶ月は掛かるらしい」 部下は予期せぬ命令に顔を上げた。なんせ、明日には不在だった副隊長が戻ると聞いていたからだ。 ただ…まあ確かに、あの男に1個中隊を任せるなんて到底恐ろしくて出来兼ねた。

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