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「ダン!生きてたのか!」 瓦礫の奥から白々しい表情で久方振りに目にした男が寄ってきた。 「ああまったく、死ぬかと思ったぜジャスティン」 「おおそうだろうよ、お前の事だからまた3階から飛び降りて複雑骨折してんじゃねえかとヒヤヒヤしたぜ」 訓練の話を蒸しっ返すなとダンは顔を顰め、既に綻びまくっている親友の降下ブーツを蹴った。大仰に痛がるジャスティンの背後から、珍しく草臥れた顔の中隊長が近づいて来る。 上官はジャスティンを押し退けるや、溜息を吐いて2人を交互に見やった。 「お前ら暇なら遺体の搬送を手伝ってやれ、橋の手前にも未だ転がってる」 ジャスティンは直ぐに戯けた面持ちを引っ込めて問うた。 「うちの損害は如何ほどですか」 「54人死んだ。3分の2がA中隊だ」 上官は淡々と告げて人混みの中へ消えた。 ジャスティンは後頭部を掻き毟り、一瞬空を仰ぐと、また下を向き歩き出す。 「行こうぜダン、遺品を送るのを手伝ってやらないと」 ダンは短く返事をして後に続いた。 そう言えばジャスティンにチョコレートバーを投げ付けた彼はどうしているだろうか。その隣で笑っていた茶髪の彼は。煙草を回してくれた少しハンサムな奴はどうだろう。 思い浮かべた顔が全部生きている訳も無く、現場に行ってみれば当たり前に知った顔形がボロ雑巾の様に転がっていた。 担架に乗せようとしていた衛生兵を制し、ジャスティンは見知った姿の側に腰を下ろした。 「パーシーめ…こんな所にも隠してやがったな。俺が聞いた時無いと言ったのは嘘か。意地汚い野郎だ」 ジャスティンはあろうことか横たわる遺体からチョコレートバーを発見して、嬉々と奪い取っている。バチが当たるぞと注意しようとした手前、ダンは急にしゃがみ込んだまま動かなくなった相手に口を噤んだ。 そうして直後に肩を震わせて顔を覆った親友を見て、ダンは黙って数歩後退し、その場を去った。 友人なんて作るもんじゃないと思った。 一貫して下士官と距離を空けていたベネットが少し利口に感じられた。 陰鬱な蟠りを抱えたまま、何故か脚は自ずと広場に面した教会に向かっていた。 聖堂の扉を押し開くや、視界が逆光に眩んでダンは目を細めた。一歩踏み出す度に大量の塵が舞い上がり、陽光が照らし出して可視化する。 祭壇の前には先客が立っていた。 トンプソンを背にしたその将校が祈る様に十字を切ったのを目にして、ダンは不思議な光景に出会した心地で歩みを止めていた。

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