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真っ直ぐに瞳を射抜くダンに、ブラックウェルは戸惑いを浮かべて後退った。けれども肩に回る腕が、退路を断って逃げる事を許さなかった。 「さて問題です」 唐突なセリフにブラックウェルが動作を止めた。 「敵陣の守りは鉄壁、攻めこんでも負けは見えている。臆病者の指揮官は一体どうしたか?」 珍妙なものを見る目つきで部下を眺めながら、ブラックウェルは恐る恐る回答を口にする。 「…罠を仕掛けて自陣に誘い込んだ」 「冴えてるじゃないですか。では敵を誘い込む為に指揮官がやった事は」 「餌を…ぶら下げる」 「まさにそれですよ少尉、分かってるならとっとと行動に移したら如何ですか」 え、何、そこに繋がるのかとブラックウェルは眉根を寄せた。しかしながら餌をぶら下げるというキーワードが全くピンと来ず、顎に手をやって考え込んだ。 ダンは相変わらず間近の上官を見詰めている。 かと思えば、いきなり相手の襟口から無遠慮に手を入れ、真剣な面持ちをしていたブラックウェルの肩を思い切り跳ねさせた。 「お前っ…ダン…何」 「餌はアンタ自身」 視線を外さないまま、ダンは五指をシャツの隙間に這わせた。相手は片手で必死にそれを剥がそうとしている。 「こう見えて料理は得意ですからご心配なく」 衣服の中でダンの指先が、柔らかく引っ掻く様に突起を撫ぜた。ブラックウェルの体が跳ね、俄に頬に赤みが差した。 一瞬の反応も見逃すまいとダンは観察し、尚も執拗に慈しんでそれを転がし、ゆっくりと擦り上げた。 「…この…っ野郎…止めろ、軍法、会議に、かけるぞ…」 「どうぞ、何て申告するのか知りませんが」 「っ前が…俺の…!」 其処ではっとして耳まで赤くなり、ブラックウェルはすごすごと下を向いて口を噤んだ。 「俺の何ですか」 「…黙れ」 「乳首を弄びましたって訴えるんですか。別に構いませんが」 しれっと言うダンに上官は終に獲物へ手を伸ばしかけたが、易易と腕を掴まれて失敗に終わった。そして抵抗する間もなく腕を引かれ、肩を抱かれて口を塞がれた。 「…ふ…っ…ん、ぅっ…」 左手が懸命にダンの軍服を握り締める。強引なやり口に反して柔らかく、巧みに絡みつく舌が自立する力すら奪い始めていた。 少し触れてやっただけで息が上がり、可哀想なほどに身を震わせる上官を、ダンは目を細めて抱き寄せた。 後頭部を捉え、髪の根元を擽るように指を滑らせ、何度も角度を変えて小さな口内を味わった。 反抗的に突っぱねていた体がいつの間にか縋り、支えなくしては崩れてしまいそうな事に気付いたのは、結構な時間欲に負けて攻め立てた後だった。 ダンは子供をあやすかの如く髪を撫でてやって、苦しそうな上官の目を無理やり覗き込む。 「…まさかもう立てないって言うんじゃないでしょうね少尉」 必死にダンにしがみついて呼吸を整えていたブラックウェルが、涙目で殺意を滲ませて相手を睨んだ。 ダンは無言でもう一度口付けると、暴れる力を喪失した身体を軽々と抱き上げ、今度こそ祭壇に背を向けて歩き始めた。 素材が良すぎる場合、どう料理すればいいのか。 ナイフを奪おうと奮闘するブラックウェルを往なしながら、勝手にそんな疑問を浮かべつつダンは教会を後にした。

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