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「おい、あれエルとブラックウェルだろ」
「はい?」
人の増え始めた夜道を歩いていたマクレガーは、前方からやけに人目を引く2人組がやって来るのを認めて立ち止まった。
ダンが怪訝な表情で目を走らせるや、確かに件の人物らが連れ立っているのが見える。
兵士達の好奇の視線が集まる中、アッカーソンは悠々と歩きながら部下に何事か話し掛けている。話し掛けられたブラックウェルの方はと言えばあからさまにぎこちなく、とても和気藹々とは言い難かったが。
「会話続くんですかあの2人」
「微妙だな。正直俺は余り関わりたくない…」
ところが踵を返そうとした所でばっちり目が合った。
向こうも此方を認識して近付いてくると、マクレガーも観念して踵を返しかけた脚を引っ込めた。
「…ようエル、ブラックウェル。奇遇だな」
「お前今、一瞬引き返そうとしたな…まあ良い、これから夕食なんだが一緒にどうだ」
はっと隣で大人しくしていたブラックウェルが顔を上げた。そうか、第三者を誘えば良かったのか。何故そんな簡単な事を思い付かなかったのか。
いや、しかし。
其処でアッカーソンと握手を交わすダンを視界に入れ、ブラックウェルは露骨に顔を顰めた。何故お前が居る、と言わんばかりの表情でダンを睨め付ける。
その恨めしげな視線に気付き、アッカーソンと和やかに挨拶を交わしていたダンが振り向いた。聡い部下は場を見渡し、即座に状況を理解したらしかった。
「少尉、俺は参加しても?」
「…何故俺に聞く」
「大尉とサシ飲みの予定だったんで、俺はどっちでも良いんですが」
暗に「俺が帰れば大尉も帰る」と告げて、憎らしい部下はゆったりと構えた。つい数時間前にされた仕打ちを思い出し、苦虫を噛み潰した様な表情のブラックウェルが苦渋の決断を下す。
「少佐が誘ってるんだから…来い」
「Roger.」
簡潔に了承を寄越したダンの隣で、どうも顔色の悪い部下をアッカーソンは不思議そうに見ていた。
何はともあれ、一行は唯一占領下でも営業を続けていた外れの洋風料理店に向かった。
夕食時もあり繁盛した店内の兵士らは、現れた有名人に揃って釘付けになっていた。そして1人袖章の無いダンも否応なく注目の的となり、好奇の目が集中した。
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