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※2.5-5
徐々にではあるが、其処はまるで初めから受け入れるべき器官の如く、堅い筒を飲み込んだ。大半が収まった頃、ダンは漸く口内を掻き回すのを止め、唇をなぞって指を離す。
可笑しくなりそうな程、扇情的な光景だった。
衝撃に身体を引き攣らせる上官が、圧迫する“モノ”の痛みにぼたぼたと涙を落とした。
「っふ…、ッ…抜…、…」
ダンは完全に相手を離してやった。
上体を起こし、虚ろな目で止めどなく涙を零しながら蹲る上官を見やる。
ベッドの脇に落ちていた上着を拾い上げ、ジッポーとラッキーストライクを探り当てた。慣れた所作で火を点けると、天井に紫煙を吐いて影を追った。
嗜好品の烟りを味わいながら視線をやると、ブラックウェルがどうにか懸命に縛られた手を伸ばし、身を捩って挿入された異物を退かそうとしていた。
「…ンっ、く…ッう、…」
態と届きそうで届かない位置で縛っていた。
掴もうと力む度、必然的に締め上げて懐中電灯が敏感な中を刺激した。
痛みと同時に突然快楽が押し寄せ、ヘーゼルの瞳がいっぱいに見開かれて、水滴を次々に零す。
「や、ぁ…ッ、…っあ、」
喉が引き攣った様に切ない悲鳴を上げ、力ない体躯が収縮した。
口端から唾液を伝わせ、荒い息を吐きながら、ブラックウェルは呆然と宙を見詰めた。
痛い、辛い、苦しい、反して奥が疼く、熱くなる
恐い、助けて、視界が歪んで見えない、呼吸ができない。
こんな物はちっとも自分の身体じゃない
逃げ出したいのにどうしようもない
なんて、卑小な存在なのか。
「…、っふ…」
シーツに顔を埋めて壊れた様に涙を流したまま、蹲る上官が抵抗を諦めたのか大人しくなった。
動かない後ろ姿を見詰め、ダンはベッドの縁に掛けた体勢で煙を吸う。
縛られた手に上着を引っ掛け、白く到底頼りない背中を震わせ、ボロ布の様に投げ出された上官はいたいけな少女を思わせた。
機銃掃射の中駆け回り、部下を怒号を飛ばしながら蹴落としていた姿を思い返した。
権力を歯牙にも掛けず噛み付く様を、
部下を背に庇った凛々しい怒りを。
それは今や目の前で白いシーツに這い蹲り、可哀想なくらい何も出来ない。
只管に痛みと熱を齎す塊に翻弄され、どうしようもなくて、上官は寝具に顔を伏せ泣きじゃくり始めた。
またか。
自分に呆れ、眉間を押さえる。
煙草を手に放置を決め込んでいたが、見ていられなくなって灰皿で乾葉を消火した。
「少尉」
食い込む紐を解いてやった。がくりと両手がその場に垂れ、虚脱に淀んだ瞳がダンを映した。
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