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「――Commence firing!!」 階下から警備兵の絶叫が轟いた。 次いで、嵐の様な銃声が巻き起こり、モーズレイは目を白黒させて把握に努める。 どうやら襲撃されているらしい。が、一体何処から敵が湧いて出たのかとんと検討が付かない。 「おい、どういう状況だ!頭から尻まで掃除して塞いだ筈だぞ!」 「明日には発つっていうのに何だアイツらは…俺とキャスの仕事を増やしてそんなに楽しいか」 這い蹲って叫ぶモーズレイには構わず、アッカーソンは物騒な目つきで小言を言いながら45口径の自動拳銃に弾倉を装填した。 因みにキャスとは彼の従卒だ。モーズレイがそう言えば安否の分からないその姿を捜していると、身を隠していた柱が飛来した跳弾で抉られた。 2階まで進撃を始めた敵にモーズレイは青褪める。 此処の戦力は現状2人、後は腹の出た将校が数名奥の広間で震え上がっているだけだ。 咄嗟に無線の下に向かおうとして、這い出かけたモーズレイの眼前に火花が散った。泡を食って飛び退き、ぜいぜいと呼吸を乱しながら柱に背を付ける。 「エルバート!援護しろ!」 「了解」 アッカーソンは端からその気であったのかコルトのスライドを引き、モデファイド・シッティングで銃身を構えた。 視界に写り込んだ影を認識した瞬間、トリガーが引かれ乾いたピストルの発砲音が反響した。 モーズレイは前進する事も忘れ唖然と目を見開いた。 小銃を手に猛進してきた敵兵が、50Mも手前で崩れ落ちる様に息絶えたのだ。 いよいよ本当に人間か怪しくなり、傍らのアッカーソンを覗き見る。 大凡当てる目的は無いハンドガンで、M1911の有効射程ギリギリをこの男は狙撃した。着弾までの所要は約0.2秒。連隊長は息巻いて指揮官としての優秀さを熱弁していたが、武器をやって前線に放り込んだ方がよっぽど良いのではないかとモーズレイは眉を潜めた。 「中佐、何も老体を危険に晒さずとも直ぐ終わりますよ」 真顔で失礼な台詞を吐き、アッカーソンは空の弾倉を放った。 「どうせ地下から湧いた鼠が餌を捜してるんでしょう、銃声からして一個小隊も無い」 「…そうか。お前のキャスが向こうで伸びているが良いのか」 「脳震盪ですかね、頭が心配だ」 直ぐ手前の踊り場で、また突発的な撃ち合いが起こった。確かにモーズレイが這って出るまでもなく、近くに居た増援が早々に駆け付けたらしかった。 手榴弾が破裂し、視界を粉塵を伴った煙が濛々と立ち込める。モーズレイが顔を上げるとその真中に脇目も振らず突っ切ってくる影が視認され、思わず身を固くして臨戦態勢をとった。

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