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「ビリー、俺の相棒が情けねえ声を出すなよ。ダンを見てみろ、今に砲弾を弾き返すぜ」 正直なところ、ダンからしてもサムの楽天っぷりは狂っていた。 日頃バディを組んでいるビリーに同情しつつ、只管に砲弾の雨が止むのを待つ。凄まじい猛攻に地面が揺れ、視界は粉塵で覆われた。 「Medi――c…!!」 後方数メートルから負傷兵の叫び声が上がった。ヘルメットを押さえ、蛸穴で身を竦めていたサムが直ぐ様顔を出した。 「何処だ?第1小隊か?」 「サム…!サム…!」 「うるせえな、何だよ」 「前、前、見ろ、早く」 ビリーが何やら歯をガチガチ鳴らしていた。ダンの手が伸びて、無言でサムの顔面を前方向に向けた。 「――…おいおいおいおい!とんでもねえぞ…!」 サムは絶叫した。雪林の隙間を縫って、巨大なティーガー戦車が堂々と姿を現し迫っていた。 「微塵切りにしてイモに混ぜる気かよ!」 「糞ったれジャーマンポテトか!?どうする」 「逃げるだろそりゃあ!」 戦略的撤退だ、声を荒げるサムの真横をライフル弾が貫通した。ビルの身体が機銃の上に崩れ落ちる。 小銃を脇に投げ、ダンは素早く相手を地面に転がして仰向けにした。 大腿から血が噴き出していた。 手で圧迫するもまるで意味が無い、舌打ちをして止血帯を引っ張り出した。 「ビルが死ぬぞ!モルヒネは」 「ねえよ。セドリックにやっちまった」 一先ずサルファ剤をぶっ掛けて処置してみたものの、既に顔色が最悪だった。ダンはコートを脱いでビルを包んでやると、砲弾で穴だらけになった後方を見渡した。 恐ろしい事に、気付けばすっかり孤立していた。撤退を促す小隊長の号令が、驚くほど遠くから反響した。 「…まずいぞ。3人で心中だ」 「何だと?ビルがうるせえから置いていかれたか」 ティーガーの主砲が機銃の操作主に向かい、ゆっくりと稼働した。 サムは青褪めて手を離し身を伏せたが、砲弾はその頭上を通り越え、2人の遥か後方に着弾した。

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