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5月に差し掛かると、連隊は敵国総統の別荘の麓街に辿り着いた。
その主は既に自殺していたが、幹部らのリゾート地が設けられた土地の景観の美しさたるや、戦闘に疲弊した青年達を魅了した。
「ジョー、山には登ったか?最高に綺麗だった!」
民家で寛ぐ友人の下に、すっかり傷の塞がったビルが目を輝かせて飛び込んで来た。
その友人は友人で、棚のシャンパンを拝借して仲間とすっかり盛り上がっていた。
「ようビル。今俺達は、帰国後の夢について語ってる所だ」
「ジャスティンが除草剤のディーラーになるって話だろ?聞いたよ」
「それはデマだ!違う…良いか、ダン、もう一度皆に説明してやってくれ」
「面倒臭えな、酔ってんのかコイツ」
ダンはしきりに身体を揺らす親友の脛を蹴った。ジャスティンが呻き声を上げ、民家の居間がどっと笑い声に包まれる。
表の通りではA中隊の面々が、肩を組んで記念撮影に興じていた。忘れもしない、何百回と謳わされた軍隊労働歌を口ずさんでいる。
「良いか…俺は家を建てるんだ。赤い屋根の、出窓で、素敵な家だ」
「お前独りでそんなもん建ててどうすんだ」
「間違えた、先にアンシアにプロポーズする。話はそれからだ」
「アンシアって確かあのモンスターか?家ぶっ壊されるぞ」
「おい訂正しろ!可愛いだろ、どう見たって!」
一同がジャスティンに写真をせがみ、爆笑する一連の流れがまた起きた。
新しいシャンパンを開けながら、うっすらと顔の赤いジョーがダンの隣に腰を下ろした。
「お前は?帰ったらどうするんだ」
「家業の手伝い…か、まあ旅にでも出るかな。勉強したい事もあるし」
「やっぱりな、ちゃんと考えてる組だと思ったよ」
「ジョーは」
「酒屋を開く。シカゴに寄ったら遊びに来てくれ」
「酒屋ね…誰とやるんだよ、1人じゃないだろ」
「ジャスティンだよ」
ダンは斜向かいで騒ぐ友人を見やり、溜め息を吐いた。
「いや、行かない」
「何でだよ!」
勝手に話を聞いていたジャスティンが吠えた。
何時の間にかシャンパンの匂いを嗅ぎつけて、A中隊員らも押し寄せて来た。
リビングはお祭り騒ぎだった。
青年達は最後の団欒を笑い、歌い、飲み、隣の相棒と肩を組んで分かち合った。
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