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「中隊長…、俺は」
脳裏に彼が姿を現す。
不遜な態度で、悠々と常に前を歩き、此方に気付いて振り返っては、優しげに笑う。
次々と出会ってからの記憶が流れた。
転がる自分を見下ろす光景が
上官を可笑しそうにからかう姿が
親友といがみ合う様が
癖の様に自分を撫でる大きな手が
絶対の自信に満ちた表情が
隣を歩いて、不意に視線が合った、翡翠の力強い瞳が、只管に間断なく蘇る。
ひた向きな感情が溢れて、ブラックウェルの頬を零れ落ちた。
歯止め無く流れて、耐え難いほど苦しくて俯いた。
「っ、好き、なんです」
絞り出した声で本音を発して、肩を震わせた。
全身で想いを曝け出す部下を、メドウズは真率な表情で見詰めていた。
「少佐と…、」
嗚咽が漏れる。
今にも崩れ落ちそうな身体が、悲痛な叫びを上げた。
「…あの、人と…離れたくない……!」
たった1つ願い続けた事は決して変わらず根付いていた。
我儘だなんて分かっていた。後の祭りだとも承知していた。
でも今更になって、身が千切れそうなほどの痛みに思い知らされた。
どうしようもなく好きだった。
彼の、その瞳を、言動を。表情も、空気も全て。
2人の時間を、手に入れた思い出を残さず、余す所なく全部、世界がそれ以外見えなくなる程、愛していた。
そうだ。誰が何と言おうと。
この想いに、間違いなんて無かった。
「ブラックウェル、もう一度聞いてやる」
変わらず腕を組んだメドウズがあの時、真夏の芝生の上で投げ掛けた物と同じ、答られなかった問を改めて部下を真っ直ぐ見やり、尋ねた。
「貴様は生き残ろうという強い意志を持っているな?」
ブラックウェルは目を見開いた。
もう疾うに答えなど出ていた。
部下の嘗て無い力強い眼差しを受け、メドウズは頷いた。
「だったら早く行け。手遅れになる前に」
以前と違わぬ思いやりに満ちた視線とかち合った。
もう何も言わない彼に背を向け、踏み出し、ブラックウェルは狭まる闇の中を只管に走った。
傷口から噴き出す血と、呼吸が止まる程の鈍痛に苛まれる。
嫌な汗が噴き出して、顔色も悪く喘鳴し、それでも留まる事無く闇雲に出口を目指した。
方位が知れない、天地すら分からぬ世界で、ふとブラックウェルは自分を呼ぶ声を耳にした。
間違えようも無いその声が、確かに遠くから反響する。
急に、目前に光が差し込んだ。
もしかして、未だ。
未だ呼んでいるのか。
こんな、下らない、救いようのない自分を。
溢れた涙を拭った。
もうこれで、一目会えたら最後になっても良かった。
脇目もふらず、残された全ての力を動員して駆けた。
光の方へ、一心不乱に、闇の中を、
躍起に、
その声の元に
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